約 431,450 件
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/848.html
724 名前:時をかけるあやせ【SS】前編[sage] 投稿日:2011/06/23(木) 22 47 34.16 ID lrzbn46HO [8/9] 私、新垣あやせは人生最大のピンチを迎えています。 桐乃が……私が大好きな桐乃が、よりにもよって、あのお兄さんと結ばれようとしてるんです!! 今更お兄さんの悪業を言い出してもきりがありませんが、 …一度は私に結婚してくれとまで言ってくれたのに… 絶対お兄さんを許せません!! とは言うものの、もはや二人の仲を引き裂くのは不可能です。 だいたい、そんなことしようものなら、お兄さんはともかく、桐乃が悲しみます。 桐乃が悲しむ姿は見たくない。でも桐乃が、お兄さんと結ばれる未来を見るのは嫌なんです。 私はどうすればいいんでしょう…… そうだ、未来を変えたいのなら、過去に行けばいいんです! ※※※ というわけで私は今、七年前の千葉市に来ています。 私には秘められた力があるんですよ。賢明な桐乃スレの住人の方々ならお気づきのはずです。 私が、桐乃スレで変態レスをつけた人物を特定し、すぐさまその人の背後に立てる訳を…… さて、桐乃とお兄さんに会ってどうするか? どうするか??どうするか??? …はっ、考えてませんでした! えっと、桐乃とお兄さんが結ばれないようにするには??? ・お兄さんを始末する……これはさすがに無理ですね ・桐乃を誘拐する……かわいい盛りの桐乃はできれば手元に置いておきたいですが、これも無理です ・桐乃がお兄さんを大嫌いになるように仕向ける……これが無難ですね、そうと決まれば。えへっ♪ ※※※ 私の目の前に、小学校帰りの桐乃とお兄さんが手をつないでやってくるところです。 くぅ……こんな小さいのにラブラブオーラを周囲に見せつけています。 これは由々しき事態!早速作戦開始です!! 「高坂京介くんですね」 「はい、そうですけど、お姉さんは誰ですか?」 「私は田村麻奈実さんの親戚です。麻奈実さんから京介くんを呼んでくるように頼まれたんです」 「そうですか…じゃあ桐乃、先に帰ってて」 「うん、わかった。じゃあね」 どことなく淋しそうな桐乃。もうシスコン野郎の汚染が始まってるようです。 早く何とかしないと…… 「じゃあ私が桐乃ちゃんを家まで送っていきますね」 こうして私はまんまと桐乃をひとりにすることができました。 後は桐乃に、お兄さんへの嫌悪感を植え付けるだけですね。 「桐乃ちゃん?」 「なーに? えっと、お姉ちゃんの名前は?」 「あや……あやか、藤崎あやかです」 「あやかお姉ちゃんかぁ」 かわいい、可愛すぎます。私にも、こんな愛らしい妹がいれば……妹が、欲しいかも…… おっといけない、今は作戦遂行です。 しかしながら、桐乃にお兄さんへの嫌悪感を植え付ける作戦は上手くいきませんでした。 どんなに私がお兄さんの極悪非道ぶりを説明しても、 「お兄ちゃんはいつもやさしいもん!」 「お兄ちゃんはそんな悪い人じゃないもん!!」 挙げ句の果てには 「きりのは大きくなったらぜったいにお兄ちゃんとけっこんするもん!!!」 …もしかして、私のやってることは、逆効果なのでしょうか? そうこうしてるうちに 「お父さん、あの人がウソをついて桐乃を連れていこうとしたんだ」 「お嬢さん、ちょっと話を聞かせてもらえないかな?」 お兄さんがおじ様を連れて戻ってきてしまいました。警察官のおじ様に拘束されたら厄介です。 ここは、ひとまず退散です。 725 名前:時をかけるあやせ【SS】後編[sage] 投稿日:2011/06/23(木) 22 49 06.13 ID lrzbn46HO [9/9] ※※※ 「待ちなさい!!」 おじ様は必死に追い掛けてきますが、私も能力者です。うまくおじ様の追跡をかわすのに成功しました。 しかし、 「いたたたたっ……」 着地の際にバランスをくずして転んでしまいました。擦り傷だらけです。 「あやかお姉ちゃん…」 そこには、桐乃の姿がありました。 「お姉ちゃん、ケガしちゃったの?」 「大丈夫ですよ。このくらいの傷、たいしたことありません」 「お姉ちゃんも、お兄ちゃんみたいなこというんだね。でもいたいんでしょ、 ほんとのこと言わないとダメだよ」 桐乃の純真な目に見つめられると私は、それまで桐乃にやってきたことが恥ずかしくなって 涙が、涙がどんどん溢れてきました…… 「やっぱりいたかったんだね。なかないで、いい子いい子。 きりのがあやかお姉ちゃんをなおしてあげるね」 桐乃は水で濡らしたハンカチで私の傷口を拭うと、ポーチから絆創膏を取り出して貼ってくれました。 「桐乃ちゃん、上手だね」 「うん、だってお兄ちゃんがケガしたときにも、こうしてお兄ちゃんをなおしたんだよ」 そう言う桐乃の顔は、本当に嬉しそうでした。 ※※※ 私は、もう一度だけ、桐乃に聞くことにしました。 「桐乃ちゃんは、誰が好きなの?」 「お兄ちゃんだよ。いちばん、いちばーんお兄ちゃんがすき! だからきりのはね、大きくなったら、ぜーったいに、お兄ちゃんとけっこんするんだよ!!」 私にはもう迷いはありませんでした。 桐乃がお兄さんを好きなのは、こんなに小さい時からの、偽りのない気持ちだと、わかったから。 ※※※ 「桐乃ちゃん、ありがとう。私、そろそろ帰らないと」 「そうなんだ、またお姉ちゃんにあえるかな?」 「わからない。でも一つだけ、お姉ちゃんの願いを聞いてくれるかな?」 「なに、なに?」 「お姉ちゃんのよく知ってる女の子で、新垣あやせちゃんという子がいるの。 その子にあったら、桐乃ちゃんの一番のお友達になってくれるかな?」 「いいよー。じゃあやくそくね」 私は桐乃と指切りをして、元の時間に戻りました。 ※※※ 「お兄さん、どうあっても、桐乃と結ばれるおつもりなんですね」 「ああ、男に二言はねえ」 「じゃあ、過去の私への発言『結婚してくれ』の精算と償いをして貰います。いいですか?」 「わ、わかった……」 「では、目を閉じてください。覚悟はいいですか」 意を決して目を閉じるお兄さんの唇を、私は奪いました。 さようなら、私が大好きだったお兄さん…… そして、これからは桐乃を宜しくお願いしますね、お兄さん…… これから先、桐乃じゃなくて私や他の女の子に色目を使ったら、ブチ殺しますからね、約束ですよ…… -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1383.html
208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 13 06 37.79 ID dz7VIIz00 krrnprpr 209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 13 54 23.89 ID AEbkrkkb0 208 krrnprpr…… なるほど、「クリリンプルプル」か! 相手は18号と言う妻がいると言うのに……漢だな! 210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 14 30 47.14 ID 2EuwzHEq0 209 「いじめないでよう!ぼくは悪いクリリンじゃないよう! プルプル」 216 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 18 15 10.82 ID AEbkrkkb0 210 京介の口撃! きりりんに52のダメージ! きりりんをおしたおした! きりりんをおしたおした。 京介は10020の経験を得た。 京介はレベルがあがった! HPが10あがった! MPが3あがった! ちから+4 たいりょく+5 かしこさ+1 すばやさ+3 かっこよさ+6 りせい-3 京介は妹婚をおぼえた! ▼ おしたおされたきりりんが甘えるような目でこちらをみている! いちゃつきますか? ⇒はい いいえ 219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 18 40 57.40 ID YZKmiqjU0 216 ラスボスきりりんは他のどんな攻撃にも耐性MAXでダメージを与えることができないが 唯一京介への耐性はまったく全然これっぽっちもないので口撃一発で倒すことができるぞ! ※俺の妹がこんなに可愛いわけがない 公式攻略本1123Pより抜粋 221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 19 00 38.18 ID 23HCIkKrO 219 どんなゲームなのかも気になるけど攻略本のページ数に吹いたw 222 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 19 10 50.80 ID AEbkrkkb0 219 あやせなら雑魚敵のかなかなもメタルかなかなすら大体「埋める」で一撃だからついついあやせを優先的に育てちゃうけど、 京介育ててないと最後で詰むんだよね。 他にはあやせだけだと地味子戦も結構きついけど。 「口撃」をきりりんに使ったときにあやせがパーティーにいると埋められてゲームオーバーになるし。 それにしても、「強くて初めから」で使えるあの子供ってもしかして…… 223 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 19 23 23.06 ID YZKmiqjU0 222 そもそもきりりんは特技「カリスマ」でパーティー全員を行動不能にしてくるし京介以外で進めると100%詰む でも京介を入れてると多少レベル低くても一切反撃してこないしむしろこっちのHP回復したり能力上げてきたりするし りせいだけ下げてればまず詰むことはない おしたおしたあとの妹婚エンディングはマジ必見だよな 224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 19 29 45.51 ID jVw4KhdfP 223 とはいえ、きりりん攫われて落ちぶれた京介に渇を入れて仲間にするところからしてかなり面倒なんだけどなw 苦労して京介仲間にしてもイベントの選択肢間違えてりせい上げすぎちゃうと『妹婚』覚えられなくて詰むし 京介の為にどれだけ振り回されたことか・・・ 225 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 19 30 59.71 ID pvKmm+Ho0 京介狙って耐性無視の魅了攻撃してくるよ 226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 19 39 23.37 ID g9NyjeVgQ 桐乃 と 楽しく 過ごした。 体力 -38 やる気 +3 筋力 +60 弾道が1上がった! 227 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 19 47 43.96 ID xvRlAs86P / / `゙==彡 / ,.イ{_ ‘, / / / / ー===―- _ , ′ -―==ミ、 ヽ} / / `ヽ | , / ´ // {> \ | / /, 〃ハ ,ィ==ミ、 | 〈 ー彡 、‘ノ `\ | ‘, 丶 / 〃ハ , | ‘, ー――‐ .. , l 、‘ノ , ./ ∧ . 、 . i / i \ 、 . / \ 人, / | \ {j ー― /// 228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 19 59 45.52 ID cs44Ps/s0 あやせたん怖い 229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 19 59 45.28 ID AEbkrkkb0 223 桐乃の初期装備「ヘアピン」の由来が明らかになるイベントとかもいいよね。 過去回想で桐乃のグラフィックが黒髪から茶髪に変わるとことかも。 230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 20 10 17.89 ID k9VYzevD0 226 弾道が上がったってことは・・・ 231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 20 17 11.96 ID JwCjZcfa0 命中するんですねわかります 232 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 20 21 42.24 ID X0dQxxVK0 224 でも京介は「シスコン」持ちだから桐乃と隣接してると能力値が跳ね上がるし クリティカルヒット連発するしでなんだかんだで使っちゃうんだよね 桐乃とセットで使うとマジ最強ユニットw 233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 20 23 02.17 ID cs44Ps/s0 京介はもっとシスコンにならないかな 234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 20 25 25.77 ID jVw4KhdfP 232 ただしまかり間違っても京介+赤城兄妹の三人でパーティを組んじゃいけないんだよな まさか宿屋に泊まっただけでBAD?ENDいきになるとは思わなかったんだぜ・・・・ 236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 20 34 57.59 ID AEbkrkkb0 232 桐乃と京介で一緒の宿に止まると、 京介の道具欄に入れておいた「ステテコパンツ」が桐乃の道具欄に移ってることがあるけど、 これってバグなのかね。 237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 20 42 14.93 ID kcBXUyXD0 236 バグかどうか知らんが、問題は移ったアイテムを捨てようとしても「それをすてるなんてとんでもない」となって捨てられないことだろ。 おかげできりりんの道具欄がぱんつだらけになってしまった。 238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 20 49 12.99 ID luOXuRZw0 237 あのパンツは隠れた凶悪アイテムだよ 「それを捨てるなんて~」状態のパンツって実は成長率修正があるから 道具欄を埋め尽くすと合計で+200%ぐらいの修正がかかる 早い時期に埋め尽くしておくと、後半別キャラと言っていいぐらいの差が生まれるから 239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 20 54 24.25 ID X0dQxxVK0 237 でもそれ転職ってかクラスチェンジに必要だしな・・・ 「兄」「妹」→「彼氏」「彼女」になるし ところで質問なんだけど「彼氏」「彼女」から「夫」「嫁」になるのに必須アイテムって何? 240 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 21 01 37.05 ID AEbkrkkb0 239 京介に「じゅんぱくのスーツ」 桐乃に「じゅんぱくのドレス」 を装備させてアクセサリーを二人とも 「ちかいのゆびわ」 に変更、「やくそくのきょうかい」に行けばイベントが発生したと思う。 昔は二人の隠しアイテム「どうてい」「しょじょ」を同時に捨てればいいとかいう噂があって騙されたなー。 241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 21 05 16.59 ID X0dQxxVK0 240 おお、サンクス それ俺も騙されたw>>「どうてい」「しょじょ」を同時に捨てればいい 試しにやってみたら何か画面がブラックアウトして光彩を失った瞳の黒髪少女が 浮かび上がってきたんだけど、あれってナンダッタンダロウ 242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/07(火) 21 08 59.19 ID kcBXUyXD0 241 道具欄みてみ。※てじょう が追加されてるから。 きりりんとの連係攻撃が必ず失敗するようになるわ、きりりんとのイベントが発生しなくなるわ、レベルがランダムに下がるわの凶悪アイテム。 orz
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1118.html
829 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/09/19(月) 12 36 43.57 ID zyJ1p6/k0 [9/20] タイトル:「抱き枕」 「ジャーーーン!メルル抱き枕新バージョン!」 「どう?いいでしょ」 俺は名前は高坂京介。もうすぐ受験を控えた高校三年生だ。 今、妹に呼び出されて桐乃の部屋に来ている。 「『どう?』って言われても、どう反応すればいいんだ?メルルの絵が描いてある普通の 抱き枕だろ」 「ち・・・あんたは全然わかってないのね。メルルを抱いて眠るこの安心感とか、普通の 抱き枕では味わえない安眠が得られるのよ。しかもこの絵柄みて!」 「まぁ確かにお前が持っているメルルグッズとちょっと絵柄が違うかも」 「そうでしょー。月見里がんまさんのサークルで作った限定メルル抱き枕なんだから、コミ ケでは搬入数少なかったから買えなかったんだけど、このあいだ通販あってそれで買えたの。 通販も数が少なかったから通販開始前から、パソコンの前で待機して大変だったんだから」 「なるほど・・・てかさ、抱き枕を買うのはいいがベッドの上にそんなに抱き枕をおいて 自分の寝る場所あるのか」 桐乃のベッドの上にはすでに2つの抱き枕が置かれていて、抱き枕の間に挟まって寝るような 状態になっている。それだけでは飽き足らず壁にもう3つほど抱き枕が立てかけてある。 「ぐっ、うっさいな。日替わりで使うから大丈夫」 「まぁ、おまえがそれでいいならいいんだが・・・それ今日はどこに置くんだ」 桐乃は部屋を見回す。 「片つければ置けそうだけど、今からかたつけは無理そうかな」 「じゃあ、どうすんだよ」 「ひひひひ」 桐乃は不敵な笑みを浮かべる。 「それが、あんたを呼んだわけ」 「俺にどうしろと・・・・・」 「今晩、あんたに1つ貸してあげるから抱いて寝て」 「何で俺がそんなことしないといけない!」 「うっさいな、メルルの抱き枕抱いて寝れるなんてそうそうないことだよ。しかも、あたしが 抱いて寝た抱き枕を抱いて寝れるんだから・・・ありがたいと思いなさい」 「・・・リアクションに困るんだが・・・」 「うれしくないの?」 「うれしいうれしくないの問題じゃない。おまえの匂いがするといってもだな・・・しょせん抱 き枕だしな・・・」 「・・・キモ、あたしの匂いがするからってあんたどんだけシスコンなの、マジひくわ。いいから 置く場所作るまで1つ貸したげる」 「わかったよ。じゃあどれ持ってけばいいんだ」 「ああ、あたしが選んどく。あんたまだお風呂入ってないでしょ。あんたの汗臭い匂いがついたら いやだから」 「俺は今晩、おまえの匂いがついた抱き枕を抱いて寝ないといけないんだが」 「うっさい、さっさとお風呂入ってくる!抱き枕はあたしが運んでおくから」 そういうと桐乃は俺を部屋から追い出した。 「まったく、勝手なやつだな」 俺はそう悪態をついたが、最近桐乃に対して今までと何か違った感情を芽生えてきている。 罵倒されても桐乃とこうやって話ができるだけでもうれしい。一緒にゲームをやっているときに腕 が触れたり、ショートパンツで座っている姿を見たりすると、動悸のようなめまいのような感覚に 襲われるときがある。これが何なのかは俺には何なのかはよくわからない。 そういう自分でもよくわからないこの感情について考えながら風呂に入ると、俺は部屋に戻った。 部屋に入ると、ベッドの布団が盛り上がっている。すでに桐乃が抱き枕をベッドに寝かせているよ うだ。 「どうしても、俺に抱き枕を抱かせて寝かせたいようだな。こんなところお袋に見られたら何言わ れるかわからないから、明日は起こされる前に起きないとな」 俺はそう独り言をいうと、目覚ましを少し早めにセットして電気を消した。 そして布団をまくって寝ようとすると・・・・・・ 「桐乃、おまえ何やってるんだ」 「だってー、京介が抱き枕じゃあ・・・物足りないっていうしぃー」 「今晩はあたしが抱き枕になってあ・げ・る」 完 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1372.html
285 名前:【SS】兄貴ときりりんの山登りの旅[sage] 投稿日:2012/01/30(月) 04 50 06.83 ID 2Zpw5Dcj0 【SS】兄貴ときりりんの山登りの旅 高坂家、いつもの朝・・・ 京介「えーと・・・地図とコンパス、水筒と食料、雨具にそれからー・・・」ガサゴソ 京介「バックパックやストック、どこにしまったっけなー・・・」ガサゴソガサゴソ 京介「ウェア類はこの一式でいいかなー後、必要な物は・・・っと」ガサガサゴソゴソ ドンドン 桐乃「ちょっと兄貴!朝っぱらからうっさいんだけどっ!」ガチャ 桐乃「って、あんた何その恰好www?南極にでも行くつもりwww?」 京介「な、何言ってんだ!行くか!!登山だよ!と・ざ・ん!」 桐乃「はぁ??なんで??」 京介「早朝ランニングの成果を試そうかな・・・っと。体力に自信もついたしな。」 京介「それに最近、少し腹筋も割れてきたしw」ペチペチ 桐乃(*¬_¬)ジー 桐乃「ふ、ふーん。す、好きにすれば?」 京介「・・・結局、ついて来たのかw」 桐乃「っ!誰が指導したと思ってんの!?指導者として、生徒の出来を見るのは、と、当然でしょ!!」 京介「wwwまっ、別にいいけどよ。桐乃、お前は登山するの初めてじゃないのか?」 桐乃「え?まぁ、初めてだけど?あたしを誰だと思ってんの?」 京介「一応、今日登る山は初心者~中級者向けだけど、調子にのるなよ!?」 京介「いくら整備された登山道でも、油断は禁物。事故のリスクを高める事になる。」 桐乃「うん。ちゃんと理解してる。絶対に無茶はしないし、あ、兄貴の言う事は、ちゃ、ちゃんと聞くし。」 京介「わ、分かってるんならいいが・・・まっ、必要な装備は俺が用意したし・・・それに・・・」 京介「桐乃になんかあったら、俺は親父に殺されるからなw」 桐乃「じゃ、じゃあ、ちゃんと、ままま、守ってくれる///?」 京介「あ、当たり前だろっ///!!で、でも、手は繋げないからな。危ないし。」 桐乃「んなっ!!だ、誰も言ってないじゃん!そ、そんな事っ!!変態っ!シ、シスコンバカ兄貴っ!!」 京介「そ、そうか?とにかく、陸上に関しては素人の俺だが、登山に関しては、俺が先生だなw」 桐乃「ふ、ふん!ちゃんと、指導してよね!」 京介「まだこの辺は、勾配もゆるいな。いいか?今のうちに言っておくが、登り方には少しコツがあるんだ。」 京介「勾配がキツくなってきたらまず、膝をしっかり上げる事。それから姿勢も大事。重心移動で前へ進む。 下半身の力だけで歩くと、すぐにバテるぞ。まぁ、陸上やってる桐乃ならすぐに慣れると思うが・・・」 桐乃「ふ~ん。なるほどね。歩幅も小さくして、全身を使って歩く感じでいいのかなー」 京介「そうだな。上半身の力を上手く使いたいのなら、ストックを使うのもアリだぜ。」 桐乃「んじゃ、使わせてもらおっかな。あっ!看板発見っ!」 京介「おっ!いよいよここから本格的な登山道になるな。ゆっくり行くから、慌てんなよー」 桐乃「オッケー。てかさ、この辺すごい苔!木にもびっしり張り付いてるw」 京介「太陽の光もあんまり届いてないしな。この木なんて、キノコ生えてるぞw」 桐乃「うわぁ~かわいいキノコw」 京介「一応言っておくけど、触るなよ~可愛くても毒キノコかもしれないからなー」 桐乃「分かってるって!『素人は見るだけにしろ!』でしょ!」 京介「それから、水分はこまめにとれよ~歩きながらでもいいからよー」 桐乃「兄貴ー!あたしの分、もうないんだけど・・・」 京介「なにー!?いつの間に!?仕方ない、俺のを少しやるからこれで我慢しろ。」 桐乃「・・・えっ!?いいの!?・・・サ、サンキュー」アセアセ 京介「川があるし、もうすぐ水場だな~そこで水分を補給しようぜ!」 桐乃「ふぅ~ここかぁ~『最後の水場』だってw」 京介「文字通りここから先は、水場はないぞ。空になった水筒やペットボトルに水を入れるぞー」 桐乃「すごーい!水が透明!キレイ~!ひゃっ!冷たっ!」ピチャ 京介「何やってんだwいいか桐乃?ここからは勾配がキツくなるからな。さっき言ったコツを忘れるなよ。」 桐乃「オッケー!」 京介「よし!行くか!」 京介「桐乃、大丈夫か?」 桐乃「うん、大丈夫。登り方のコツも掴めてきたし~」 京介「さすがは陸上部ってかw油断すんなよ~」 桐乃「もう!分ってるっての!ところでさ、兄貴あれ何?」 京介「ああ、あれは登山道の順路みたいなもんだ。雨などで地形が変わって、道が消えたりするからな。」 桐乃「ふ~ん。じゃあ、この矢印のほうに進めばいいの?」 京介「まぁ、そういうこったw」 桐乃「あっ!なんかある!」 桐乃「・・・だってwwwいっぷくしようよ~兄貴ぃ~」 京介「そうだな。たぶんこの先に、休める所があるんだろう。」 桐乃「ここかな~?ちょっとした広場に出たけど?」 京介「ここだなーそれより桐乃、後ろ見てみ?」 桐乃「うっわぁ~!こんな高い所まで来てたんだぁ~」 京介「だな~w遠くのほうに見えるのは三方五湖だなーその先には、日本海も見えるな!」 桐乃「ほんとだ!兄貴のカメラの望遠レンズでなんとか見えるwギリだけどw」 京介「うっせwおー?なんか看板もあるな。」 桐乃「夫婦松?てかさ、頂上まで1.5km!?」 京介「おお!もう半分くらいまで来てるぞ!」 桐乃「あたしからしたら、『まだ1.5kmもあんの!?』だけどねっ!」 京介「まぁ、そうカッカッすんなってw夫婦松ってどれだろ??」キョロキョロ 地元のおじさん「こんにちは~若い登山者とは珍しいねえ。」 京介「あっどうも、こんにちは。ご夫婦で登山ですか?」 地元のおばさん「そうですよ~そちらは彼女さんですか?」 桐乃「あqwせdrftgyふじこlp;ちちち、違いますっ!!」アセアセ 京介「すいませんwww妹ですw」 地元のおばさん「あらw?まぁ、仲の良いご兄妹ね~」 地元のおじさん「先程お兄さんは、夫婦松を探していたようですが・・・?」 京介「そうなんですよ。でも見当たらなくて・・・」 地元のおじさん「実は、これなんですよ。」 桐乃「あ・・・1本切られてる・・・?」 地元のおばさん「ええ。見ての通り、木の腐食が進んじゃってねぇ・・・」 京介「整備される方はいないんですか?」 地元のおじさん「もうみんな歳でね~林業する家も減ってしまってね・・・」 地元のおじさん「行き届く範囲でしかできないってのが現状ですな・・・」 地元のおばさん「そこに切られた木が、今もベンチの代わりとしてあるわよ。」 桐乃「・・・そっか・・・ちょっと座らせてもらおっかな。」 京介「じゃあ、俺も・・・」 地元のおじさん「では、我々はこれで・・・」 地元のおばさん「もうひと踏ん張りですよ!頑張って下さいねぇ~」 京介「あっ、はい!ありがとうございます!」 桐乃「ありがとうございます!お気をつけて。」 京介「俺らもそろそろ行くか~」 桐乃「たっぷり休んだしね~」 桐乃「よいしょっと!そういやあんた、あんまり息切れしてないじゃん!?」 京介「そうか~?汗は結構かいてるけどなー」 桐乃「ちゃんとスタミナ付いてる証拠でしょ?まっ、合格点あげてもいいケド?」 京介「ありがたき幸せwまぁ、お前のペースで走ってりゃ、否が応でも鍛えられるわw」 桐乃「ふんっ!言っとくけど、あたしがあんたに合わせてやったの・・って、あっ!またまた看板発見っ!」 桐乃「やっと700m!風神ってなんだろ?」 京介「確か・・昔この地域で疫病が流行ったらしいぜ。それを行脚中の僧が、石塔を山中に祀れと告げて去ったんだって。 それで、この場所まで石塔を運び上げて供養したところ、疫病が治まったという話があるらしいぜ。」 桐乃「こんなとこまで!?昔の人はすごいね。」 京介「これか・・・周囲の木が切り払われてて、ひっそりと佇んでるな。」 桐乃「ねぇ、兄貴?・・・手を合わせて行こ?」 京介「そうだな。ついでに掃除もして行こうぜ!落ち葉だらけだし。」 桐乃「そだねwあっ!?お供え物がある!さっきのご夫婦かな?」 京介「そうかもな。俺達も何かお供えして行こうぜ。おっ?石塔の横に何か書いてるな・・・」 京介「うーん・・『天保三年霜月建立』って書いてあるなって、天保!?」 桐乃「天保3年といえば、たぶん西暦1832年くらいじゃないかな?『霜月』ってことは11月かー」フムフム 京介「(さすが・・・)という事は、1832年の11月頃、ここで供養されたのか。」 桐乃「正面には、『国家安全悪風退散衆病悉除如意吉祥』って書いてあるよ?うっすらだけど。」 京介「全く意味分からんなwでも、漢字を見るとやっぱり病気があったってのが分かるな・・・」 桐乃「・・・落ち葉払ったら、かなりキレイになったねw」 京介「じゃあ、最後に手を合わせて行くか!」 桐乃「ちょ、ちょっと!兄貴!!なんか前が開けてきたんだけど!」 京介「おお!!もうすぐ頂上だな~」 桐乃「わぁ~すごい!!原っぱ?何?ここ?」 京介「これは尾根だなー!尾根は歩きやすいし、道も分かりやすい。そして何より・・・」 京介「絶景が拝めるって事だっ!!」 桐乃「うわぁぁ~たっかーい!すんごい眺め!!」 京介「だろ~wそうだ!山の方に向かって『あれ』やってみw?」 桐乃「あれ??」 京介「山と言えば、これだろっ!!(ノ ゚Д゚)ノ <ヤッホー!!」ヤッホーヤッホー 桐乃「うはwwwやまびこかぁ~www」ニヤッ 桐乃「んじゃ、あたしも・・・(ノ*゚Д゚)ノ <シスコンバカ兄貴ー!!」シスコンバカアニキーシスコンバカアニキー 京介「ぶふぁっ!!な、何言ってんだ!?やめろっ!嗚呼・・あんな遠くの山の方まで・・」シスコンバカアニキーシスコンバカアニキー 桐乃「wwwww」 桐乃「あー面白かったw」スッキリ 京介「・・にしても、時期が遅かったなー秋だったら、ススキの草原が広がってるんだが・・・」 桐乃「でも、まだ少し残ってるとこもあるケド?」 京介「ほんとだ。でも、もう冬だし仕方ないかー夏だったら、生い茂った芝生に弁当を広げてゴロゴロ出来るんだぜw」 桐乃「へぇ~wあたしもあったかくなったら、あやせと公園にでもピクニックに行きたいな~」 京介「芝生での昼寝は最高だぜw・・ん?・・ちょっと雲行きが怪しいな・・・ほら急ぐぞ!もうすぐだ!」 桐乃「あんた寝過ぎだってばwwよっし!待ってなさいよ!頂上!」 京介「・・・桐乃、着いたぞ・・・っ!!」 桐乃「ほんとっ!?あっ!!なんか立ってる・・・もしかして!!」 桐乃「とーうちゃーくっ!!やったぁー!!さすがのあたしも疲れたぁ~」 京介「初登山で初登頂、おめでとう!桐乃!!お疲れさんっ!!」 桐乃「(`・∀・´)エッヘン!!」ドヤッ 京介「こらこらw登るのやめろw」 桐乃「いいじゃん別に!って標高842m!?どうりで高いはずだっつーの!」 京介「そう考えると、富士山の高さが身に染みてよく分かるなw」 桐乃「ほんとw超初心者のあたしでは富士山なんか絶対無理っ!見るだけでいいわw・・・あれ?何この石?」 京介「ああ、これは『三角点』と言って、簡単に言えば測量に使う時の基準みたいなもんさ。」 京介「登山の好きな人の中には、三角点を目標にする人も多いみたいだぜ。」 桐乃「ふ~ん。測量だけでなく、登山者も基準にしてるんだ。」 京介「・・・天候が怪しい・・・名残惜しいがそろそろ行くぞ!」 桐乃「・・・え!?」 京介「桐乃・・・まさか頂上に、沙織がヘリコプターを用意して待ってるとでも思ったか?」 京介「それとも・・・黒猫が黒魔法でテレポでもしてくれるとでも思ったか?」 京介「それともなにか・・・?あやせがなんとかしてくれるとでも!?」 桐乃「あ、兄貴・・・ま、まさか・・・っ!!」 京介「自力で登ったら、自力で下りる・・・っ!!それが『登山』だっ!!」キリッ 桐乃「うへぇ~」 兄貴ときりりんの山登りの旅 終 ロケ地:福井県若狭町 三十三間山 ※きりりんのような軽装での登山は絶対にしないで下さいw 次回予告
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/964.html
244 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/25(月) 18 00 35.60 ID AhxHbi6J0 [4/7] 【SS】プロフィール 「ただいまー。 っと、誰もいないのか」 俺が麻奈実との勉強会から帰ってくると、リビングには誰もいなかった。 留守ってワケでもないだろうし、お袋は買い物、桐乃は自室でエロゲでもしてるんだろう。 「ん?桐乃のヤツ、雑誌を出しっぱなしにしてるな」 テーブルの上に広げたままの雑誌を見つける。 桐乃っていつもどんな雑誌を読んでるんだ? ソファーに腰掛け雑誌を手にとって見る。 「ファッション雑誌か。 前は桐乃もこういう雑誌に載ってたんだよなー。 って今も載ってる!?」 ちょうど開いてあるページに桐乃とあやせのツーショットが載っていた。 二人とも健康的な水着姿だ。 俺は慌てて雑誌の表紙を確認する。 今月号―発売日は明日。昔のじゃないな。見本誌か? 雑誌名も覚えた。明日買いに行って秘密のコレクションに追加しなくては。 「じゃなくて! あいつ、いつの間にかモデル業を再開してたのか」 そういや仕事の関係で御鏡の野郎と二人きりで会ったとか言ってたが、いつの間にか本格的に仕事してたのか。 もしかして美咲さんが海外に行く代わりに仕事を押し付けられてんのか? 次第にハワイやら上海やらサイパンやらで撮影するようになって、気がついたらほとんどを海外で過ごすようになってると か・・・・・・ やばい。あの人ならやりかねない。 「後で確認しとかねぇとな」 あやせも一緒にいるから平気だとは思うが、もし桐乃と一緒にいられると誘われたら二人で海外に行ってしまうかもしれない。 もしそうなったら、泣き落としてでも止めないとな。 「それにしても、桐乃の写真写りは相変わらずいいな」 親父のスクラップブックを見たり、桐乃にバックナンバーを押し付けられたり、 それでも手に入らなかった雑誌はオークションを使ってつい入手してしまって知ってたが、 前よりも綺麗になったんじゃないか? ラブリーマイエンジェルあやせたんも天使だが、物言わず笑っている桐乃も天使と言わざるを得ない。 しかもあやせを中位の能天使とするなら、桐乃は上位の熾天使。 あいつが妹じゃなくて、本性を知らなかったら惚れてたかも知れんね。 まぁ実物のあいつは理不尽な事この上ない、天使とはかけ離れた存在だけどな。 最近は少しは可愛げが出てきた事は認めるてやるが、まだ天使とは認めてやれないね。 「しかし、最近あやせより桐乃を見ているほうが多くなった気がするんだよな」 ついこの間気付いたんだが、秘密のコレクションのさらに奥、たどり着くまで30分はかかる、 隠してあるというより厳重に封印してあるという言葉が正しいあの場所にしまっているコレクションの比率では、 あやせより桐乃の方が倍近く多くなっている。 「確かに正面から桐乃の笑っている顔を見るのは、あやせの笑っている顔を見るのよりレアなんだが」 何故こんなに惹かれてしまうんだろう。 いや、シスコンならこれくらい当たり前か。 赤城のヤツも瀬菜ちゃん写真集を自作してそうだしな。 ただ、雑誌に載ってる桐乃の写真はどれも綺麗なんだが、なんか少し物足りないんだよな。 今までに数えるほどしか見たことのない、桐乃の微笑みには遠く及ばない。 カメラマンの腕が悪いのかね? そんなことを考えながら雑誌をめくっていると、ある項目に目が止まった。 「モデルのプロフィール? そんなのまで載ってるのか」 今までは桐乃とあやせの写真しかチェックしてなかったから気づかなかったぜ。 載っている情報はスリーサイズと経歴、本人からの一言か。 桐乃のプロフィールとか、なんて書いてあるんだろうな。 まさか、 『1997年生まれ。千葉県出身。中学三年生で陸上部所属。「休日は大好きなお兄ちゃんと買い物して過ごしてます♪」』 とか、可愛いことが書いてあったりしてな。フヒッ♪ さて、桐乃のプロフィールは― 身長165cm、体重45kg、スリーサイズB82/W54/H81 1997年生まれ。千葉県出身。中学三年生で陸上部所属。 「暑い日はクーラーのきいた部屋で大好きなお兄ちゃんと一緒に眠ります♪」 「想像の斜め上にぶっ飛んだっ!?」 誰こいつ!もしかして編集のときに誰か他の人と間違えたのか? 確かに経歴は正しいが、スリーサイズは去年のままだしな! 今は俺の見立てではB84/W54/H83だっつーの! 胸のふくらみが豊かになって、加えて、さらにいいケツなったってのにウェスト据え置きとか、どんな女神だよ! それなのに家の中じゃタンクトップとホットパンツとかラフな格好しやがって、 俺じゃなけりゃ一日一回は抱きしめてるか押し倒してるっつーの! その上こんなお兄ちゃん大好きっ子なら、俺の精神はとうの昔に理性と共にぶっ壊れてるわ! 「どうかしたの!?」 ハッ!あまりの衝撃に我を失っている間に、俺の叫び声に驚いた桐乃が下りてきやがった! 「あ、あんた、何勝手にあたしの本見てんの!?」 桐乃が雑誌を奪取しようと飛びかかってくる。 とっさに俺は桐乃の手が届かないように雑誌を頭上に掲げる。 「勝手に見たのは謝る。返すのはいい。だが、その前に質問に答えてくれ」 あと雑誌を奪い取ろうとして身体を押し付けてくるのも止めてくれ! 俺のリヴァイアサンは親の言う事をきかない暴走息子なんだぞ! 「な、なによ」 桐乃は一歩下がって俺を睨みつけてくる。 ふぅ。いつもどおりの桐乃だ。その冷たい視線が俺を落ち着かせてくれる。 だが、少し体が震えているようだ。あのページを見られたと思って怒ってんのか? 「おまえ、モデル業再開したのか?」 俺の質問に、件の事について知られていないと判断したのか、桐乃は表情を和らげた。 「ううん。本格的には復帰してないよ。 ただ時々美咲さんに頼まれたり、あやせにヘルプをお願いされたりして仕事する事はある。 留学のときに貯金も減っちゃったし、色々欲しいものもあるからお金は必要だし」 やっぱり美咲さんに頼まれてんのか。 美咲さんに目をつけられる事を承知であやせが桐乃に頼むのは、桐乃との接点を失いたくないからか? 昔桐乃に世話になったって言ってたし、あやせは桐乃にモデルを続けてもらいたいのかもな。 「美咲さんはなんか言ってこないのか? ロケ地で海外行く事が多くなって、気がついたらほとんど海外で過ごすようになっていた、 ってことになるかも知れないぞ」 「それは平気だと思う。ちゃんと説得してわかってもらえたから」 「本当に平気か? 御鏡に聞いたんだけどよ、美咲さんは俺たちが兄妹だってこと気づいてたらしいぞ」 「それは知ってる。 だから、仕方ないけどなんであの時兄貴を連れて行ったのかとか、 一度海外で失敗しちゃって、しばらくは海外で何かすることは許してもらえない事とか話して理解してもらったから」 「そうか。それならいいんだ」 「あたしを海外に連れて行きたいなら、まず兄貴を説得してって言ったら 『貴方たちの仲を引き裂くのは難しそうね。これからも二人でお幸せに』だってさ。 あんた、美咲さんにも超ド級のシスコンだと思われてるよ」 桐乃がからかう様に笑う。 「うるせぇ。おまえだって同じだろうが」 彼氏に兄貴を見繕うとかな。 まぁ桐乃の彼氏なら何度だって引き受けてやるけどよ。 「じゃあ次の質問だ。 これって何なの?」 桐乃に先ほど見ていたページを突きつけた。 「ぎにゃぁぁぁぁぁああ!」 桐乃は奇声を上げると、俺から雑誌をぶんどって胸元に抱きしめた。 「なに?おまえ、やっぱり俺のこと好きなの?」 「京介の事が好きっていうのとは関係なくて! これはそういう意味で書いたんじゃないから!」 桐乃が顔を真っ赤にして睨みつけてくる。 やっぱり、勝手に見ちまったことを怒っているらしいな。 「さっき言ったでしょ?美咲さんにあんたが兄貴だってこととか話したって。 そしたら美咲さんが 『今まではお兄ちゃん大好きっ子っていう設定だったけど、これからはお兄ちゃん超好きっ子っていう設定でいきましょう』 とか言い始めて、勝手にこんな事書かれちゃったの!」 なるほど、美咲さんのせいか。 海外行きを断られた腹いせに、桐乃のことをからかって遊んでるんだろう。 「他の候補は 『ご飯はいつもお兄ちゃんにあ~んしてもらってます♪』とか 『いつもお兄ちゃんに抱きしめてもらいながら寝てます♪』とか 『ファーストキスの相手は大好きなお兄ちゃんです♪』とか 『いつもお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ってます♪』とか 『お兄ちゃんとキスするのが大好きです♪』とか 『今一番欲しいのはお兄ちゃんとの子供です♪』だったんだから。 これでも一番マシなのを選んだんだからね」 「ますますぶっ飛んでんなあの人!」 特に最後はまずいだろう、年齢的に。 というか、候補を選ばせてもらえるなら、その時点でもっとマシなのに変更してもらえよ。 「その・・・・・・イヤだった?」 桐乃が節目がちにたずねてくる。 ちっ。そんな顔で言われたら文句なんて言える筈ないだろ? 「イヤじゃねえよ。むしろこんな雑誌に堂々と『大好きなお兄ちゃん』って書いてもらえて嬉しいぜ」 「・・・・・・キモ」 桐乃はプイッとそっぽを向いた。 だが、そこまで気持ち悪がっているわけじゃないみたいだな。 「まあ、このコメントのおかげで変な男も言い寄ってこないし、役に立ってるんだけどね。 だから、あんたが構わないならコメントはこれからもコメントはこんな感じにするから」 そうか。 ただ美咲さんの趣味ってだけじゃなくて、実益もあるのか。 しかも桐乃に男が近寄らない効果があるっていうなら俺が反対する理由はないな。 「俺は構わないぜ。 なんなら、そのコメントどおりに実行するか?」 「え!?京介はあたしと子作りしたいの!?」 「なんで一番ヤバイコメント載せようとしてんの!? 美咲さんといい、御鏡といい、おまえといいモデル業界ってエロゲ脳ばかりなのか!?」 顔をさらに赤く染めて、モジモジと可愛らしく自分の身体を抱きしめながらそんなこと言うんじゃねえ! 「第一おまえはまだ中学生だろうが。 手を出したら淫行罪で親父に捕まるわ!」 「そうだよね。 そういうことはあと三年たってからだよね。 今は一緒にお風呂に入るくらいで我慢しないと」 「わかってんじゃねえか。 ・・・じゃねえよ!いくら兄妹でも混浴は世間的に十分やばいわ! ていうか、おまえ俺をからかってるんだろ」 ま、まさか本気で言ってるわけじゃないよな。 「あ、あたりまえじゃん。 あんたがキモいこと言うから、調子を合わせてあげたの。 でも、ふ~ん。 そうなんだ。そんな理由なんだ」 桐乃はまだ少し赤みの残る顔で俺の顔を覗き込む。 「な、なんだよ」 「なんでもない。 ただ意外と乗り気だったなーと思っただけ」 「?」 「とにかく、あんたが言い出したんだし子作りとか、混浴の件はともかく、コメント通りの行動はなるべく取って貰うからね。 もともとあたしもあんな嘘が書かれてるのはイヤだったし」 嘘つくのがイヤだからプロフィールどおりに振舞う、か。 桐乃らしいな。 「ああ。頑張って『大好きなお兄ちゃん』役をやらせてもらうぜ」 「ん。それじゃあ、参考資料としてこの本はあげる。 これからは雑誌が出るたびにあんたに恵んであげるから。 あたしに貰うんだから、いつでも読めるようにあんな変なところに隠さないで、本棚に堂々と置いておくこと!」 なんで桐乃にあの場所がバレてんの!? 大掃除でもしない限りあんなところを見るはずないのに! そんなことを考えながら、桐乃から差し出された雑誌を受け取る。 「ヘンな事に使ってもいいケド、ちゃんと大事にしなさいよ?」 「使わねえよ!」 おまえ、自分の兄が自分が載ってる本を使ってナニをしてると考えてんだ。 大体、写真を見なくてもいつも近くにエロ―じゃなくて薄着の格好の実物がいるじゃねえか。 いや、別に桐乃をそういう目で見てるってわけじゃないからな? もしそういうことをするならっていう仮定の話だぜ? それにだな― 「なぁ、桐乃。 おまえんとこのカメラマンて腕が悪いのか?」 「は?そんなはずないじゃん。あたしを撮るんだもん、超一流のカメラマンを使ってるよ」 「それにしては前と比べてなんか物足りねえんだよな」 「それどういう意味? ・・・まさか、あたしが前より不細工になってるって言うつもりじゃないでしょうね」 言ったら殺す、と桐乃の目が訴えてくる。 「そうじゃねえよ。 むしろおまえ、前より綺麗になってるって。 なんていうか今を力一杯生きる恋する乙女みたいな」 「え?」 桐乃の顔が朱に染まる。 なんだその反応。今の例えは適当に頭に浮かんだ言葉を言っただけだったんだが、まさか 「まさかおまえ、誰かに恋してるのか!?」 それなら綺麗になったのも頷けるが、お兄ちゃんは絶対にそんなの認めないからな! 「そんなはずないから! ・・・あたしはずっと京介だけの傍にいるから、安心していいよ」 そ、そうか。それならいいんだ。 「それで、あたしがますます綺麗になったのに、なにがダメなの?」 「なんか、いつものおまえと違うんだよな。 いつも俺の見ているおまえの方が生き生きとして輝いてるって言うか・・・ 大好きなことに夢中になっているって言うか・・・ なぁ、一体なんでなのか知らないか?」 桐乃の顔がさっきよりも赤くなっていく。もう首まで真っ赤だ。 「知らない!」 桐乃はそう言うと、後ろを向いて階段のほうへ走っていってしまった。 「おい、桐乃!」 わけがわからず、とっさに呼び止める。 桐乃は足を止め振り返ると、べーっと舌を出し、 「ばーか」 と言った。 その顔は、その表情は、その雰囲気は今まで見た全ての雑誌にも載っていなくて― なんだ。 やっぱり、たとえ怒ってても、写真で見る桐乃より本物の桐乃の方が何倍も魅力的じゃないか。 余談だが、次の日の夜親父に渋面で「京介の部屋にもクーラーを設置してやる」と言われた。 何でそう言い始めたのか理由はなんとなくわかるんだが・・・・・・ まさか本当の話だと思っていないよな? まぁ、その話は節電を理由に桐乃によって白紙に戻されたんだがな。 -END- -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/649.html
810 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/05/01(日) 12 47 31.39 ID +brzAKNN0 [1/6] 「シミュレーションゲーム?」 「そ、シミュレーションゲーム。すごいんだよこれ。神ゲーktkr!って感じ」 やたら嬉しそうな顔をした桐乃の前に積まれた箱、箱、箱… 俺はその中から一つを手に取る。 「何々…『Siscon 4.0』?」 「あ、それ、本職の兄妹も一緒に入って開発したやつ。兄を操縦して妹とくっつけるやつね。 超リアルで日常生活で起こること全部シミュレートされてるし、行動もすんごく人間っぽいんだよね。 『リアルじゃないからクソ』なんて言葉が生まれるくらい。でもあまりリアルすぎて素人にはお勧めできない」 お前はなんかのプロなのか!?ってかこのやりとり前にもしなかったか!? 「次は…『Lock On Modern Brother Complex』?」 「それ、今度は妹を操縦するやつね。グラフィックスがスゴいいいの。 どっちかというと妹に偏ってるけど、初めてならここら辺からかな?」 Lock Onって何をロックオンしてるんだ?怖いから聞かないけど。 「…えっと?『Maccrosoft Combat Sibling Simulatror』?」 「あ、それ兄妹げんかのシミュレーションね。平和なのが好きならCombatがつかないのもあるよ。 そっちの方が売れてるしね。ただねー、こないだ開発終了になっちゃったんだよねー。MODとかもたくさんあって初心者にお勧めだったのに。」 MODって何だよMODって。お前の言ってることはよく分からんわ。 「お、これで最後か…『あたしは妹婚管制官~新婚さんハッピーウェディングデイ』?」 なんだこのド直球なタイトル!? 「ああ、それ、バラバラになった兄妹を管制してくっつけるってゲーム。パズル的な要素が多いからパズル好きなら楽しめるよ? 別な兄妹を同じ道に入れて鉢合わせさせるとゲームオーバーね。あたしらは法務省(ryって呼んでる」 法務省何なんだよ…ってなんでそこで法務省が出てくんのよ… しかし、やっぱりこいつ、好きなゲームのことになると口数多くなるなぁ… 「…お前の好きなゲームは大体分かった。で…その…お前、これ妹と兄がくっつくゲームだろ?現実でにやってみたいとか思ってんの?」 「…!!ばっバカじゃん!?妹が兄を好きとかないから!」 …だよなぁ… 「…ま、まぁ…そんなに言うならやってあげないこともないけど…」 「え?なんか言ったか?」 「…何でもない!つーかこれあたしがクリアした順に貸すからやっておくこと!宿題だかんね!」 またこのオチっすか!? 「操縦」と聞いてこんなのを思い浮かべてしまった俺はフライトシマー。 ぼく管はケータイでやっただけだが、Faclon4.0もLOMACもMSFS(MSCFS)もやったことがあります。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1679.html
176 名前:【SS】:2013/04/07(日) 04 17 49.49 ID 0qwrO0EiP 「よっし、この問題も正解っと……」 なんだか今日は調子がいいぜ。この調子なら俺、本番も楽勝じゃね? あらぬ誤解により家を追い出された俺、高坂京介は今日も勉強に励んでいるわけだが。 ……なんでここに桐乃がいるわけ? さっきからおとなしく漫画読んでるだけだし、勉強の邪魔になってるわけでもないから 俺はまぁ……構わないんだけどな? 「なぁ桐乃。おまえ、ここに来てもいいの? 俺まだA判定とってねーんだけど」 俺に目も向けず、漫画雑誌に視線を落としたままメンドくさそーに答える妹様。 「んー? もう模試は終わったんでしょ? だったらあたしが居ても結果が変わるわけじゃないし。 それにA判定、取るんでしょ?」 「お、おう。」 そのために俺、いろんなやつに迷惑かけちまったからな。もしこれでA判定が取れてなかったら あいつらに合わす顔がないぜ。 とは言っても後は模試の結果がでるまでの約1ヶ月、祈るしかないんだけどよ。 しっかし、こんだけ静かな桐乃ってのも珍しいよな…… カリカリ、カリカリ…… あ、くっそこの問題の答え間違えてやがる――― 「あ、あ、あ、あのさ!」 「んあ? なんだ急に?」 「あたしとポ、ポッキーゲームしなさい!!」 ……はぁああああ!? 「な、いきなり何言ってんのおまえ!? エロゲーのやりすぎでとうとう頭おかしくなっちゃったの!?」 「お、おかしくなんかなってない! べ、別にあんたとポッキーゲームがしたいわけじゃなくて これ最後の1本だしあんたに1本くらいあげてもいいかなって思ったけどそのままあげるのも しゃくだしでもゲームで取られる分にはいいかなって思っただけだし!」 いや意味わかんねーよ! 「だからほら! い、いくよ……?」 パクリとポッキーの片方を咥えたかと思うと 「ん―――」 お、俺にどうしろっていうわけ!? え、何?まじですんの!? 前にやらされたエロゲーにこんなシチュエーションがあったような気もするが現実の 妹ととって恥ずかしすぎんだろ!? 「ん……」 しかもおまえ顔真っ赤じゃねーかよ! 無理して恥ずかしいことしてんじゃねーよ!! つーか顔ちけーよ! (ほ、ほら……はやく来なさいよ……) やべぇ!変な幻聴まで聞こえてきた!? 「お、落ち着け桐乃! 兄にほどこしをくれてやろうっていうおまえの気持ちだけありがたく 頂いとくから! な!?」 とりあえず桐乃を落ち着かせようと俺は手を伸ばし…… あの時、きっと俺もかなり焦っていたのだろう。 パキン 「……」 「……」 あー…… 「―――っっ! あ、あんたなんてことしてくれてんの!? このあたしが最後の1本を あんたにあげようって言ってんのよ!? それを全部だいなしにしてくれちゃってあたしが いったい何本のポッキーで練習したと思っ―――」 「わ、わるかったよ! 折る気なんてなかったんだって!! ただ手元がちょっと狂っただけでさ!!」 別に涙目で怒るこたねーだろ!? 「こ、こうなったら意地でもやってやるんだから! ほ、ほらいくわよ!」 パクッ ってなんでよりによって短いほう咥えてんだよおまえは!? 「んー!んー!!」 「わ、わかったって! やりゃいーんだろやりゃ!?」 くっそ恥ずかしいなんてもんじゃねーぞコレ。なんの拷問だ一体……? お、落ち着け俺! ただ妹から菓子をわけてもらうだけだ! 10cm……5cm……ゴクリ。 だんだんと桐乃の唇が俺に――。 「……なに、してるんです? おにいさん。……それに桐乃」 !!!!!!!!!!! 「あやせ!?」 「あやせ!?」 いいいいったいいつの間に入ってきた!? 今までまったく音も気配もしなかったぞ!? 「こ、これは違うのあやせ!」 「こ、これは違うんだあやせ!」 や、やばい。これはヤバイヤバイヤバイヤバイ…… 「そう。違うんですか。 話しはゆっくりと聞かせてもらいますから――」 ……ユラリ。スゥ― あやせが音もなくこちらへ近づいてくる。 やべぇ、体が動かねぇ…… かろうじて横目で桐乃の様子を伺うと、桐乃も俺と同じく、顔を引きつらせて固まっている。 この後、俺と桐乃が超こえーーーーあやせさんにされたことは……思い出したくもない。 ―おわり― -----------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1092.html
470 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 03 52 16.02 ID nqbfbYLM0 [1/5] SS『俺の親友がこんなにウザいわけがない』 最近、俺の親友が激しくウザい。 これまでも、俺の普通理論を否定したり、勝手に麻奈実との仲を推測したり、 様々なウザい所業を行ってきた赤城のヤローだが、今回のウザさはその比じゃねえ。 「よっ!妹とはプリクラ止まりの高坂ぁ!妹との仲は進展したかよ?」 な?ウザいだろ? 「・・・何度も言わせんなよ、そんな簡単に変わるわけじゃねー つか、俺はおまえみたいに、妹の事が好きで好きでしょうがねえってわけじゃねーよ!」 「そーかそーか。やせ我慢も大概になーwww」 くっ・・・マジうぜー 仕方ねー・・・俺も手段を選んでる場合じゃねーな。 「まあ・・・たいした事じゃねーが、ほんの少しだけ、CG付きのイベントがあったぜ?」 「CG付き・・・?と、とにかく何かあったんだな?」 「おうよっ!」 「ふ、ふーん・・・どうせおまえが大げさに言ってるだけだろ?」 今までドヤ顔だった赤城のヤローも、少しだけ俺から発せられる雰囲気を感じたのだろう。 ほんのわずかだが、動揺を隠せないでいやがる。 「くくく・・・この前のことだがな・・・」 「な、なんだよ」 「ウェディングドレスを着た妹と、街中を走り回ったぜ!」 「なっ・・・なっ!?・・・ウ、ウェディングドレス・・・だと!?」 どーだ?いくらシスコンのてめーだろうと、ウェディングドレス姿の妹と一緒ってのは無理だろwww 「今回はおまえの負けだ、諦めるんだな!」 「くっ・・・だがっ!」 「だが?」 「冷静に考えりゃ、別におまえと結婚したわけじゃねーしな。 それに桐乃ちゃんモデルだろ?そういう服着ることもあるわけだろ?」 「・・・・・・・・・」 くそっ、赤城のヤツがこれほど冷静だったとは! これじゃ俺が『妹と仲良くなって浮かれてる馬鹿兄貴』みたいじゃねーか。 「まっ、とにかく俺に勝とうと思うんなら、まず桐乃ちゃんにキスくらいはしてもらってからだな~」 「・・・・・・・・・」 ・・・今に見ていろよコンチクショウめ・・・ 「で、家に帰ってくるなり、あたしにキスしろって迫ってきたわけ?」 「・・・はい」 「あんた馬鹿じゃないの?」 「・・・すんません」 「つか、お母さんたちが居たら、あんた家から追い出されてるわよ?」 「・・・ごめんなさい」 そして家に帰った俺は、早速妹様からお叱りを受けているところなわけだ・・・ 赤城との対決で熱くなってたとはいえ、いきなりキスをせがむなど、兄貴のやることじゃねーよな・・・ 桐乃も顔を真っ赤にして激怒してる様子がはっきりと見て取れる。 いや、顔だけじゃねえ。首も・・・いや、手足も赤くなって・・・全身で激怒っすか!? 「・・・つかさ、あんたそんなに赤城さんに勝ちたかったワケ?」 突然、桐乃から質問が投げかけられた。 赤城に勝ちたかったかって?なんか良くわかんねー質問だが・・・ 「別に赤城に勝ちたいってわけじゃ・・・いや、やっぱ勝ちたいっていうか・・・」 「どっちよ」 「いや、赤城には確かに勝ちてえんだけどよ、それはおまけみたいなもんだ。 あいつらが仲良くしてるのを見ると、なんか俺たちの仲が負けたみてーで悔しくってよ」 「ふ、ふん・・・」 まあ、でも仕方ねーよな。 俺と桐乃の仲が好転しはじめたのもすっげー昔に思えるけど、まだ、たったの一年と少しだけだもんな。 さすがに十数年ラブラブ兄妹やってた赤城兄妹に勝てるわきゃ――― 「ねぇ・・・それじゃ、せなちーがした事より凄いことをすれば勝てるんだよね?」 突然、桐乃が無茶苦茶な事を言い始めた。 「そ、そりゃー瀬菜よりすげー事なら・・・って、す、凄い・・・コト!?」 「なっ、何考えてんのよ変態っ!」 だって凄いコトって言われたら・・・なぁ? おまえの持ってるゲームならアレだろ? 『お兄ちゃん・・・来て・・・』とか言って、俺に血涙流させるんだろ? 「あ、あたしは単に、せなちーに勝ちたいって思っただけで、そ、そんな具体的にっ!」 単に赤城兄妹に勝とうと思っただけか・・・ん? 「桐乃。まさかと思うが、おまえも瀬菜に兄妹仲の自慢でもされてたってわけか?」 「う、うん」 あのヤロー共・・・俺の桐乃に、余計な事言いやがって。 こうなったら、ぜってー勝たないと気がすまねーぜ! 「桐乃・・・」 「うん」 「あの兄妹にはぜってー勝つぞ」 「うん!」 さて、問題は赤城兄妹でも無理なことをしなきゃならんわけだが・・・ いや、エロ方面は無しでな! もちろん、桐乃は可愛い。正直兄である俺ですら襲ってしまいそうな事はある。 でも、それはさすがに兄妹で踏み入れちゃまずい領域だろ? 「・・・だけどよ、キスの先っつったら・・・えっちだよなぁ・・・」 「な、何言ってんの!き、兄妹で、え、え、えっちなんてっ!まだ早いしっ!」 あ、あれ? 「俺、口に出してた?」 真っ赤な顔でぶんぶんと首を縦に振る桐乃。 しまったなぁ・・・まさか聞かれちまうとはなぁ。 「と、とにかくえっちなのはダメ!」 まあ、そうだよな。俺だって、エロ方面は無しでって考えてた所だからな。 ・・・それにしても、おまえ。さっき『まだ』って言ってたよな? つまり、そういうことか!?期待していいのか!? 「京介。なんか顔がキモい」 「も、元からだぜ?」 あっぶねー。 今度は表情に出ちまったらしいな。 それにしても、エロ以外であいつらを超えるのって難しすぎねーか? 瀬菜のほっぺちゅーは、まあギリギリ兄妹愛で済むだろうけど、 直接口同士は完全にアウトだし、エロなんて論外だ。 「ねえ、京介」 「ん?なんだ、桐乃」 さっきまでの怒ったり、恥ずかしがったりとは違う落ち着いた雰囲気で、桐乃は俺に微笑みかける。 たぶん、俺が本当に求めていた桐乃がそこに居た。 俺の妹の、でもそれ以上に、一人の女として。 「京介が悩んでるから、あたしがヒントをあげるね。 ・・・キスの先って、京介の思うものだけじゃないよ」 そうか。そう、だよな。 エロゲに毒された・・・いや、今時の『普通』ってのばかり見てた俺は気が付けなかった。 でも、この一年の間、おまえに教え続けてもらったよな。 普通でない事が―――いや、そうじゃない。 おまえと一緒に生きるって事がこんなにも楽しい事だってな。 それなら、俺から言うべきことは一つしかないよな。 「で、俺たちに勝った・・・だと?」 「ああ。俺たちの圧勝だぜ!」 「ふ、ふんっ!どうせ、桐乃ちゃんに土下座でもして、キスをせがんだってか?」 「フッ・・・違うな」 俺は不敵な笑みを浮かべる。 赤城のヤローの悔しがる顔が今から見えるようだぜ! 「だ、だったら、何をしたっていうんだよ・・・ま、まさか!?」 「おまえが何を考えたかはしらねーが、エロい事じゃねーよ」 「そ、そうか」 ふっ、赤城。おまえはエロじゃないと俺たちに勝機が無いと思ってんじゃねーだろうな? 「だけどよ、それじゃ何をしたってんだよ?」 「特に何も」 「おい!」 「いや、俺と桐乃で、ちょっとした約束をしただけだぜ」 「や、約束?」 そうだ。 別に、キスしてエッチしてってのが全てじゃないだろ? 赤城と瀬菜が兄妹であるように、俺と桐乃は家族なんだ。 だから、俺と桐乃だけの約束をしたんだ。 「まず、俺と桐乃は、幸せや喜びを分かち合い、悲しみや苦しみを共に乗り越えていく」 「え、えーと・・・」 ん、なんだ? 急に勢いが無くなったな? 「そして、お互いに永遠に愛し合うってな」 「・・・・・・・・・」 お、おい、どうしたよ。黙っちまって。 そんなに兄妹の間では普通のことだったか? ・・・まぁ、別にいいか。 大事なのは、普通かどうかって事じゃなくって、俺たち自身がどうかって事だもんな。 とりあえず、放心している(呆れてるんだろうな)赤城は放っておくとしてだ。 桐乃との話じゃ、近いうちにみんなの前で宣言するイベントも行うって事にもなってる。 あやせや加奈子、沙織に黒猫も呼ぶとして、赤城兄妹もせっかくだし呼んでやろうかな? 俺たちが世界最高のシスコン・ブラコンだってみんなの前で公言するのはちょっと恥ずかしいけどよ、 桐乃が言うには、区切りってのも必要だって話だ。ちょうど良い予行演習になったんじゃないかな。 それにしても楽しみだぜ。 何しろ、俺は桐乃にも秘密にしてることがあるからな。 イベントの最後に、俺はとっておきの一言を叫ぶつもりなんだ。 『俺の妹はこんなに可愛い!』 ってな。 End. -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/297.html
318 名前:名無しさん@お腹いっぱい[sage] 投稿日:2011/02/11(金) 21 58 31 ID YcD7KRX3O 習作 題: <愛しい日々よ> 注意事項: 8巻以降の妄想 キャラ妄想 エロゲの主人公のような兄貴 原作全て、かつ俺妹Pのネタばれを含みます。また、同作から、 台詞や表現をそのまま記載しています。 目標事項: 高坂兄妹以外も書く _______________________________________ 俺の名前は高坂京介。 近所の高校に通う18歳。 自分で言うのもなんだが、極々平凡な高校生―――――――だった。 平凡で、変わり映えのしない、緩やかな毎日。 かつて俺が愛しいと思っていた日常は、きっともう戻らない。 なぜなら俺は――――――――。 「―――ちゃん。きょうちゃん。きょうちゃんてば~~~。」 慣れた声と名前で現実に引き戻される。 幼馴染は心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。 「きょうちゃん、最近ボーっとしてることが多いけど、大丈夫?」 「………悪りぃ。ちょっと、寝不足でな。」 「もう、きょうちゃん。勉強頑張るのもいいけど、無茶しちゃだめだよ?」 「ああ。分かってるって。」 俺は急いで鞄に荷物を詰め込み、立ち上がる。 「帰るか、麻奈実。」 「あ、ごめんね、きょうちゃん。 今日はちょっと、用事があって、一緒には帰れないの。」 「………そっか。じゃあ、また明日な。」 俺は鞄を担いで教室を出ようとした。 「あ……まって、きょうちゃん。」 「ん?」 「きょうちゃん、何か悩み事あるでしょ?」 いつもいつも、俺のことを心配してくれる麻奈実。 ホント、おれの母親か、婆ちゃんのような……得難い友人だ。 「まあ、お前にはばれちまうよな。 ………でも悪りぃ。ちょっと、お前にも相談できないことなんだ。」 「そっか。でも、私で力になれることがあったら何でも言ってね?」 「おう。サンキュな、麻奈実。」 教室を抜け、廊下を渡り、玄関に着くと黒猫が居た。 彼女が上履きを脱ぎ、外靴を履いて顔を上げると、俺と目が合った。 軽く手をあげて挨拶する。 「先輩。今帰りかしら?」 「おう。折角だし、一緒に帰るか?」 「ええ。…………先輩、顔色が悪いわ。」 黒猫は不安そうに俺の顔を見上げる。 「大丈夫だ。ちょっとした寝不足でな。心配すんな。」 「………そう。ならいいのだけれど。」 黒猫と並んで下校する。 俺たちはごく自然に、クラスのことや部活のことを語り合う。 普通の先輩と後輩。 しかし以前はそうではなかった。 今でも思い出すあの夏の日々。俺たちが恋人でいられたのはわずか数日のことだった。 俺たちは短い日々の間に多くを得て、多くのことに気付き、 ―――そして、ただの先輩と後輩に、あるいは仲のいい友人に戻った。 黒猫に非は無い。すべては俺の責任で、俺の不甲斐無さのせいだ。 俺は彼女に恨まれていても、愛想をつかされて嫌われていても仕方ないのだ。 それでも、黒猫は俺の後輩で居てくれる。こうして以前のような友人でいられるよう、 努めてくれていた。 俺には彼女の内心を窺い知ることは出来ない。 それでも、黒猫の優しさが嬉しくて、それに報いてやりたかった。 そう思って、普段通り会話を続けていたのだが、黒猫は立ち止まって俯いてしまう。 「……どうした。」 「先輩。やはり顔色が悪いわ。本当にただの寝不足?それとも―――。」 「…………ハハ。悪いな、心配掛けて。」 「そう。やはり、まだ迷っているのね。」 「迷うっつーかさ。どうしていいのか、わかんねえんだわ。」 「そうかしら?考えることなんて、ないと思うのだけれど。」 「……そうか。お前がそう言うなら、きっとそうだと思うけどさ。」 「あら?私って、随分と信頼されているのね。」 「まあ、お前って優しいしな。 ―――それに、俺のことなんざ、何でもお見通しなんだろーしな。」 そう言って俺は歩きだす。 しかし、黒猫は動かなかった。 俺が振り向くと、黒猫は俺に告げる。 「先輩。誰だって、他人の心なんて見えないわ。私だってそう。あなたは私が何でも お見通しみたいに言うけれど、全然、そんなことはないわ。だからこんなにも、私 は苦労しているの。」 「他人が何を感じているか、自分のことをどう思っているか。その本心を見ることは、 とても難しい事よ。いいえ、所詮他人の心を把握することなんて、出来ないわ。」 黒猫はまっすぐに俺を見つめる。 その真剣な目は、必死に俺に何かを訴えかけるようで、強く、切なげだ。 「それでも、人は、他人の本心が知りたいと思うものなのだと、私は思う。 そう思い続けるべきなのだとも。そうでなければ、人と関わって生きていくことは、 とても寂しくて、ただ苦しいだけだわ。」 「………………。」 「だから先輩。しっかりしなさい。」 以上よ、と告げて、黒猫は早足で立ち去って行った。 正直、この時は突然のことで、俺は黒猫の言いたいことがよく理解できていなかった。 玄関を開けると、リビングから出てきた妹と鉢合わせになった。 ライトブラウンに染めた長い髪。爪には鮮やかなマニキュア。 スラリと伸びた手足。均整のとれた身体。 すっぴんでも十分に目を引くだろう顔を、入念なメイクでさらに磨き上げている。 「ただいま。」 「………お帰り。」 未だ慣れない挨拶を交わし、お互いに黙りこむ。 居心地の悪い空気が流れた。 桐乃は、俺と黒猫が別れた、と聞いた時から、黒猫に以前よりも、優しく…という か、黒猫に対して素直になっていた。 相変わらず口論は絶えないようだが、それでも、傷ついた親友を心配しているのだ ろう、変化があった。 そして、逆に俺には、自分からはまるで話しかけてこなくなった。 最初はとまどったが、それも当然なのだろう。 詳しい事情は話していないが、俺のせいで親友が傷ついたのは事実なのだから。 俺の方も、桐乃を避けるようになっていた。理由は―――― 「……なに玄関で突っ立ってんの。」 「……うるせえよ。」 俺は靴を脱いで玄関に上がり、リビングのドアを開く。 入れ違いになった桐乃は、フン、と鼻をならして階段を上がって行ったようだ。 相変わらずハラの立つ態度だ。 ―――なあ、おい、信じられるか。 俺、どうやらあんなやつのことが好きらしいぜ? 冷蔵庫から麦茶を取り出して、グラスに注ぐ。 一気に飲み干し、ふう、と一息ついたところで、お袋が声を掛けてきた。 「ねえ、京介。ちょっといいかしら?」 「あんだよ。夕飯のお使いか?」 俺、色々あって疲れてるんだけどなー。 「ちがうわよ。桐乃のことなんだけど。」 「桐乃?桐乃がどうかしたのかよ。」 「あの子、最近なんだか様子がおかしくない?」 「………そうなのか?」 「そうよ。……あんた、もしかして気付いてないの?」 「全然、気付かなかった。」 理由は単純で、最近桐乃のことを避けているからだ。 あいつも、最近は俺に話し掛けてはこない。 「はあ。あんた、そんなだから折角出来た彼女にもフられちゃうのよ。」 お袋よ。それは傷心の息子には禁句だぜ。 ていうかあんたの方がデリカシーないだろ。 「なんていうか、……不安そうなのよね。すっごく。」 「不安?あいつが?何を。」 「そこまでは…ちょっと分からないんだけど。 でも、以前はずっとあんな感じだったのよね。まあ、あそこまでじゃないけど。」 以前、というのは恐らく――――。 「そうそう。ちょうど、あんた達が仲悪かった頃みたいに。」 「……まあ、良く分からんが、気をつけてみるわ。」 お願いね、と心配そうなお袋を残して自室に戻る。 いつもなら机に向かうところだが―――。 ぼすっとベッドに倒れこむ。 そのまま仰向けになって天井を仰ぎ、次いで妹の部屋との壁を見つめる。 『あんた達が仲悪かった頃みたいに』。 あの頃の桐乃は、ここ1年程のあいつと比べて、不安そうにしていたというのか。 妹のことを、居ないものとして完全に無視してきた俺は、そのことに気付いていなかっ た。 思えばこの1年、桐乃の巻き起こす騒動に付き合わされ、必死になって世話を焼き、 俺たちの関係は変わったはずだった。 なのに、今も俺は桐乃の変化に気付いてやれていない。 結局俺たちの関係は俺が思っているほど変わっていないのだろうか。 相変わらず、俺は妹が何を考えているのか全然分からない。 あいつは、いつも――――。 そう。いつだって桐乃は、……………分からない。 急に機嫌を良くしたり、悪くしたり。 俺に笑顔を向けてくれるかと思えば、思いっきり睨んできたり。 俺なんかゴミみたいに見下してんのかと思えば、世話を焼いたことに対して、感謝して ると言ってくれたり。 俺の前から突然いなくなって、だけど帰ってきてくれて。 俺を偽の彼氏にしたかと思えば、俺の前に偽の彼氏を連れてきた。 全然、まったく、何を考えているのかさっぱり分からない。 今だって、何に悩んでいるのか、俺には分かってやれない。 それでも、これまでそうしてきたように、俺はあいつの兄貴だから―――。 だから、あいつが悩んでいるんなら何とかしてやりたい。 そう思って部屋を出た。 桐乃の部屋のドアをノックする。扉はすぐに開かれた。 「……何?」 「は、話があるんだ。」 桐乃は、少しの間、逡巡するように視線を迷わせていたが、 「………入って。」 「おう。」 いつものように、俺は妹が放ってきた猫のクッションの上に座る。 そして桐乃は、なぜか俺の正面にクッションを置き、その上に座った。 「め、珍しいな。」 「……いいじゃん別に。で、話って何。」 「お袋が心配してたぜ。お前、何か悩んでんのか?」 問いかけると、桐乃は表情を強張らせた。 そしてすぐに俯き、ぼそりと告げた。 「…………あんたには、関係ない。」 「………それは、俺じゃ、お前の力にはなれないってことか?」 「………………。」 長い沈黙。しかし桐乃は黙ったままだ。 妹は視線をさまよわせ、眉根を寄せて目を伏せ、何事か逡巡しているようだ。 なるほど、お袋が心配するわけだ。 鈍い俺でも一発で分かるくらい、桐乃は不安そうで、どこか怯えているようだった。 何かに耐えるような桐乃の沈黙は、いっそ、『あんたなんかあてにならない』とでも 言われた方がマシなんじゃないかとさえ思えた。 「何とか、言ってくれよ。」 「………じゃあ、あんたに聞きたいことがある。」 「……何だよ。」 「あんた、………あんた、なんで黒いのと別れたりしたの。」 「そ、それは、今関係ある話じゃねーだろ。」 「いいから、答えなさいよ。」 「それは…………………………すまん。言えない。」 言えるわけがない。 しかし桐乃がそれで納得するはずもなかった。 「なんで!!」 「そ、それは………お前には、関係ないだろ。」 「関係ある!!!!!」 「関係………………あるわよ。」 「あたしに関係ないわけ、ない。」 顔を上げた桐乃は泣いていた。強く目に力を込め、歯を食いしばっている。 絶対に泣くまいと強く心に誓い、力の限り耐えて、それでも、どうしても涙だけが零れる。 お前、なんでそんな顔してるんだよ。 どうしようもないほど胸が苦しくなり、泣いている桐乃をどうにかしたくて手を伸ばした。 「桐乃―――。」 「触んな!!!!!!」 バシッと部屋中に響くような音を立てて手が払われる。 これまでにない、強い拒絶だった。 「っ痛……!?」 「もう、もう嫌……。ワケわかんない。なんなのよ。あたし……あたしは、どうすればいい のよ………………。」 桐乃は頭を抱え、何に対してか分からない呪詛を呟く。 様子がおかしい。 「おい桐乃、お前大丈夫か!?」 「うるさい!!!」 桐乃はさらに身を固くして叫ぶ。 「あんたなんか、―――――――あんたなんか大っ嫌い!!!!!!!」 俺はよほど情けない顔だっただろう。 自分でもはっきりと分かるくらい顔面蒼白だったし、一瞬視界が白く染まって気を失う かと思った。多分傍から見たら死にそうな顔だろう。 だからかもしれない。叫んだ桐乃の方が驚いた顔をしていたのは。 そして、そんな桐乃の表情で俺も意識を取り戻すことができた。 俺は混沌とした頭と心で必死に言葉を紡ぐ。 「あのな、正直何でお前がなんでそんなに怒ってんのか俺には分からねえ。けど、本気 で怒ってんのは分かる。だから、ワケは分からんがきっと俺が悪いんだろ。とにかく 謝るよ。ごめんな、桐乃。」 「あ、あの………。」 「だから泣くな。お前が泣いてると俺はどうしていいか分からん。」 あと、黒猫と別れた理由は、気持ちの整理がついたら絶対話すから。 そんなようなことを言った気がする。 そして、桐乃の返事を待たずに部屋を出て、自室に戻る。 本当はもっと桐乃と話をするべきだった。だってこれじゃ、何の解決にもなって無い。 しかし、その時の俺にはなにも考えられなかった。 ただただ、桐乃の見えないところに行くことしか頭になかった。 妹の悩みを聞きに行って、その妹から逃げ出す情けない最低の兄貴だ。 ドアを閉めて、そのまま腰が沈んだ。ずるずると背中が扉にこすれる。 『あんたなんか、大っ嫌い――――――。』 そう。そんなことは知っていた。ずっとそう思ってきたし、それが当然だった。 なのに、俺には流れる涙を抑える気力すら、湧いてこない。 「そういえば、意外にも。」 「言われたこと、―――――無かったな。」 ここにきて俺は、否応なく自分の本心に気付かされた。 やはり、あの日の黒猫の指摘は正しかったのだ。 そう、あれは俺と黒猫の最後のデートの日――――― 「改まって、話ってなんだよ。」 その日の夕方、街でのデートを終えた俺たちは、中央公園のベンチで並んで座っていた。 黒猫に大事な話があるからと言われ、落ち着ける場所として、俺はこの公園を選んだ。 黒猫は答えず、至近距離でじっと俺の目を見ている。 彼女の真剣な瞳は美しく、吸い込まれるように見入ってしまっていた。 こ、これはもしかして…………。 しかし、俺の期待は裏切られた。 「ねえ先輩。ちょっと聞きたいことがあるのだけど。」 「―――――へ。キスするんじゃねえの?」 黒猫は、目を見開いてかぁっと紅くなり、腰を引いて俺から遠ざかった。 「き、き!?……あ、あああああああ。あなた、何を考えているの!?」 「だ、だってお前、お前が至近距離で見つめてくるからだろうが!?」 「ひ、人が真剣な話をしようとしている時に、何ていやらしい雄なのかしら………。」 おぉい黒猫!? そりゃひどいんじゃねぇの? だって、俺達恋人だよ? 夕方の公園のベンチだよ? むしろここはイチャイチャして当然じゃん………。 ぜってー俺は悪くない。絶対だ。 「わ、悪かったよ。……それで、話って何だ?」 「…………。」 黒猫は視線を伏せ、答えない。口を開きかけては、視線を逸らしてやめてしまう。 何かに迷うような彼女の仕草は、しかし真剣なもので、俺は黒猫が自分から話し出すのを 待ってやることにした。 しばらく待っていると、黒猫は、一瞬ギュッと目を瞑り、意を決して話を切り出してきた。 「先輩。私たち、ここ数日はずっと一緒に過ごしてきたわね。」 「ああ、そういや毎日デートしてるな。ラブラブって感じだな。ハハ。」 「………茶化さないで頂戴。」 「悪りぃ悪りぃ。」 「…………ふぅ。まったく。えぇっと、それで………そう。」 「あなた、時折上の空と言うか。ぼんやりしていることがあったわ。 ………何を考えていたのかしら。」 心当たりはある。時折、フッと考えていたこと。 俺と黒猫が、毎日のようにデートをしていた理由。それについて思うことがあり、俺は 時折ぼんやりと、そのことに思いを馳せていた。 だが、それでも極僅かな時間の筈だ。 俺は黒猫のことが大事だし、一緒にいる時間を大切にしたいから、余計なことは考えない ようにと、努めてきた。 「…………ほんと、よく気付くよな、お前。」 「ええ。あなたのことを、見ていたから。」 黒猫から想いを告げられたあの夏コミの翌日にも同じことを言われた。 しかし、あの日感じていたような陶然とした気分にはなれなかった。 黒猫は、寂しげな、それでいて冷やかな目で、俺を見上げている。 「何を考えていたか、当ててみましょうか。」 「……面白いじゃん。言ってみろよ。」 「『何故妹は、俺に彼女が出来ることに反対しないんだろう。』」 「――――――っ。」 「……ふっ。どうやら、図星のようね。」 あの日―――――黒猫に告白された俺は、すぐには返事をしてやれなかった。 俺は桐乃に彼氏が出来ることに猛反対した。 結果として御鏡のやつは偽の彼氏だったが、俺は本気で、あいつの気持ちなんか無視して、 妹を取られまいと無茶苦茶を言って別れさせようとした。 なのにその次の日に、告白されたからって恋人になるなんて、出来ないだろ。 それにあいつのことだから、大事な友達を取られたみたいで怒るんじゃねーかって思った んだ。 あいつが怒って、また黒猫とギクシャクしちまったら、沙織にも黒猫にも申し訳ない。 けれど、黒猫の告白を真剣に受け止めるなら、さっさと返事してやらなくちゃ―――。 そう思って、俺は数日悩んでいたのだが―――――。 『あんた、黒いのにコクられたんでしょ?―――――付き合っちゃいなよ。』 桐乃は、突然そんなことを言ってきた。 「なあ黒猫。」 「何かしら。」 「お前、俺に告白したこと、桐乃に話したのか?」 「…………いいえ。むしろ逆よ。」 逆? 「私はね、あなたの妹に背中を押されたのよ。」 「………え?」 「勘違いしないで頂戴。あなたに想いを告げたのは、もちろん私の意思よ。―――でも、 そうね。あの子が納得してくれるなら…………それが、私にとって、より望ましい。」 それは、どういう意味なのだろう。 真意を知ることの出来ない俺を置いて、黒猫は続ける。 「あの日、あんなことになって、正直私は怖くなってしまったわ。 どちらを選んでも後悔することになる。目の前に、その事実を突き付けられて。 ……ふっ。口では恰好のいいことを言ったけれど、あんまり不様で我ながら泣きそう だったわね。」 「でも、他ならぬあの子に背中を押されてしまっては、その意思を、汲まないわけには いかなかった。いったい何を考えて、どんな思いで私の後押しをしているのだろう。 そう、考えてしまうもの。」 薄く微笑む黒猫。 大切なものを慈しむようなその笑顔は大人びていて、もの寂しげでもあった。 そしてその笑顔のまま、俺に問いかける。 「ねえ先輩。お願いがあるわ。」 「ああ。なんだ。」 「私に、聞かせてくれないかしら。ここ数日、私との逢瀬だというのに、一体どんな気 持ちでいたのかしら。あなたが何を想っていたのか、聞かせて頂戴。」 とても、とても大切な問いかけだった。 俺は、黒猫のことが好きだ。以前から気になっていたし、告白されてメチャクチャ嬉し かったのも本当だ。毎日デートして、本当に楽しかった。 だけど、こいつと2人きりの間、黒猫のことだけを見れていなかったのは本当だ。黒猫が 怒っていてもしょうがないと思う。だから、正直なところを話すことにした。 「先に言っとくけどな。お前とデートして、俺はすげえ楽しかったよ。 お前と彼氏彼女やれてるのが嬉しい。本当だ。それだけは信じろよ。」 「………ええ。信じてあげる。」 「そんで、お前の言うとおりだよ。俺は桐乃が、俺たちが付き合うことに賛成してんのが 悲しかった。俺はあいつに彼氏がいるって聞いて、大慌てして、騒いで、無茶苦茶やら かしたのによ。俺のことなんざどうでもいいのかって思って、ムカついてた。」 俺ってやつは、本当にどうしようもないシスコンだ。 こんなバカみたいな、ガキみたいなこと言っちまってよ。 だってのに、黒猫の奴は黙って話を聞いてくれるから、俺は止まることが出来なかった。 「俺ばっかあいつのことに必死になって、心配してさ。なんか、寂しかったんだ。 すげえ寂しくて、悲しかった。」 黒猫は目を閉じ、くすっと小さく微笑う。 「……それが、あなたの気持ちなのね?」 「ああそうだよ。こんな情けない彼氏で、本当にすまない。」 俺は向き直って黒猫に謝罪する。 「………そう。では先輩。私がひとつ、躾として教えてあげるわ。」 「し、躾ぇ?」 躾っておい。 「あなたには呪いがかかっていたのよ。私があなたにかけた呪いより、ずっと前から。 でもそれは、巧妙な迷彩と封印によって隠されている。だから先輩は自分が呪われ ているという自覚さえない。そしてその呪いの効果のために、私の呪いの効き目が 半減してしまっているのね。だから私は、いつかあなたがその呪いを打ち破ってく れると信じて、私のために、あなたの呪いの封印を解いてあげましょう。」 「………何の話かさっぱり分からん。」 黒猫は言い放つ。 「先輩。あなたは妹が好きなのよ。それもきっと、妹としてではなく。」 「………………………………………………………………は?」 言っている意味が理解できない。 俺が?桐乃を?い、妹としてではなく!? どうやら俺は声に出していたらしい。 黒猫は腕を組んで、こくこくと頷いている。 「え、ええええぇぇぇぇえええええぇえぇええええ――――!!!!!????」 「っ!きゅ、急に大きな声を出さないで頂戴。」 「だってお前、ば、馬鹿じゃねぇーの!?」 「馬鹿とは、どうして?」 「き、桐乃は妹だぞ!?妹に恋する兄貴なんか現実にいねえよ!!!」 「あら?私の目の前にいるようだけれど?」 「だから誤解だ!!!確かに俺はシスコンかもしんねーけどさ、あんなムカつく やつのことなんて………。」 「では、嫌いなの?本当に?」 「そりゃ、もちろん――――――――――。」 「嫌いだよ。だけど…………………。」 ずっとずっと、ずっと、俺は桐乃なんて大嫌いだと思っていた。今だってそうだ。 なのに、いつからか相反する気持ちが湧いてきて、めちゃくちゃ妹が心配になった。 ムカつくのに、生意気なのに、妹がかわいくて、一緒にいると楽しい事もあって。 俺が答えに迷っていると、黒猫はベンチから立ち上がり、2、3歩ほど歩いて俺の 方に向き直る。 「……………そうよね。あの子は嫌な女よ。 本当に腹の立つ女よ。いつだって私の気に食わないことを言ってくるし、傲慢で 矮小で。何度くびり殺してやりたいと思ったことか。」 「―――だけど、ふと気がつくと、あの子と共に過ごす時間を愛しいと思っている 自分がいる。」 黒猫は胸に手を当て、噛みしめる様に想いを告げる。 俺は黒猫の、ここには居ない桐乃への告白を聞いた。 「居なくなってしまって、自分にとってどれだけ大きな存在か気付いたわ。 大嫌いだけど、大好き。とても憎たらしいけど、でもとても可愛くて。 まるで、年の近い、大きな妹が増えたみたいな、そんな気持ちよ。ふふ……… きっと私も、呪いにかけられているのね。」 きっと、俺と黒猫の桐乃への気持ちはとても似ている。大嫌いで、憎たらしくて、 だけどとても可愛くて、可愛くてしょうがなくって。心配で。 いなくなっちまうと寂しくて死にそうになる。 「黒猫、お前――――。」 「………何よ。呪うわよ。」 顔を紅くして、ジト目で俺を睨む。 こいつのこんな表情は久しぶりで、俺は思わず笑ってしまった。 「ふん。……………ねえ先輩。自分の気持ちは分かったかしら?」 「それは、分かったつもりだ。俺は妹として、桐乃が好きだ。愛してると言っても いいね。けど、お前の言うのとは、―――――――。」 「………違うの?本当に?」 「…………………………ち、ちがうはずだ。多分。」 「…………ふぅ。まだ認めないとはね。強情な駄犬だわ。躾が足りないかしら?」 好き放題言いやがる。 確かに俺はシスコンだし、桐乃が好きだ。でもそれは、妹としてってだけで、 俺が今まで、あいつに色々やってきたのも、そのせいだ。そう。例えば―――― 例えば、深夜の秋葉原から自転車で飛んで帰った。 例えば、短いメール1つでアメリカまで連れ戻しに行った。 例えば、あいつと彼氏を本気で別れさせようとした。 ―――あれ? 途端、俺の胸の中にモヤモヤするものが湧いてくる。 思い返せば、俺の行動は、例えシスコンでも、ハッキリ言って異常だった。赤城の やつでも、きっとそこまではしない。 い、いや………もし、仮に。 仮に、俺があいつのことを本気で好きなんだとしても――――。 「お、俺にはお前がいるだろ?」 「………!」 俺の縋るような言葉を聞き、黒猫は目を大きく見開いた。顔を紅くして、俯いて、 両手を握りしめ、細く震えて、そして俺に最後の問いかけをする。 「では、切り口を変えてみましょうか。」 「お、おい、お前まだ―――――。」 「月並みだけれど、先輩はあの子と私、どっちが大事なの?」 サアッと、一陣の風が通り過ぎて行った。 何も迷うことはないはずだ。目の前の恋人が一番大事だと、そう言ってやるべきだ。 こいつの彼氏だっていうなら、それが当然のことだろう。 なのに、俺はそう言ってやれない。言えないのはきっと―――――。 「………二人とも、俺にとっては大事だよ。嘘じゃない。」 「…………………そう。その答えだけで十分だわ。」 「何が……。」 「先輩。一旦、私たちの関係を無かったことにしましょう。」 再び風が吹く。 黒猫の長い髪が揺られ、赤い瞳から零れた涙がきらきらと流されていった。 「わ、私は、前に言ったでしょう?自分の欲求に素直になって、思いっきり欲張りに なるのだと。私にとってもっとも望ましい結末を目指すとも。」 確かに耳にした、黒猫の決意だった。 「私はね、先輩。あなたがとても大切よ。あなたが、あなたの妹を大切に思うのに 負けないくらい。だからあなたにも、私のことを1番に見て欲しいの。そうでな ければ、私の望みは果たされないわ。だから―――――――。」 「だから、俺がお前を1番に見てやれないなら、恋人ではいられないと?」 「ええ。その通りよ。」 「………確かに、俺はお前を一番に見てやれていない。それは認める。 だけどな、これから付き合っていくうちに、お前の望むようにしてやれるようにな るんじゃないかって、俺はそう思う。それじゃあ――――――駄目なのか?」 「駄目よ。何度も言わせないで頂戴。私は欲張りになったの。 ………そうね。だからこそ、本当はあなたを手放したくはない。」 「だったら――――。」 「でも、それでは駄目なの。それでは私が納得できない。あなたが自分の本音に向き 会いもせず、私を逃げ場所にするかのように縋ってくるのは、わたしの思い描く、 もっとも望ましい結末ではないわ。」 彼女の望む結末。黒猫は、そのために全力を尽くすと言っていた。 なら、こいつが俺と別れようとしている理由は―――。 「あなたが自分の気持ちに決着をつけて、それでもその時、私が一番大事だと言える なら―――。その時は、再び私の恋人にしてあげるわ。」 黒猫は微笑む。目の端に涙を浮かべながら。 それでも包み隠さず本音を打ち明けてくれた彼女は、どこか晴れやかな笑顔だった。 そんな顔をされれば、もう俺から文句など出るはずもない。 「お前の気持ちは分かったよ。」 「ええ。分かってくれて嬉しいわ。先輩。」 穏やかな微笑み。 これが俺の失った恋人かと思うと、その場に倒れ伏して泣きたくなった。 そのぐらい、俺は黒猫が好きだった。だから、いつか。 いつか、俺の気持ちに決着がついて、もしその時俺にとってこいつが一番なら。 そう、胸を張ってこいつに言える日がきたなら―――――――。 その時は、今度は俺から告白して拝み倒して、なんとしても彼女になってもらおう。 そう思った。 桐乃に拒絶されたあの日から、数日が経っていた。 今や、黒猫と別れたあの日から続く俺の悩みは、寝不足と比例して深刻なものに なっていた。 隣の部屋にいる妹が気になって眠れず、苛立つ感情を勉強にぶつけてやり過ごす 日々。 いっそこのまま気でも狂ってしまえば、楽になれるかもしれなかった。 あの日から、俺と桐乃は一言も口を聞いていない。 桐乃は、俺と目を合わせることさえ避けるようになった。かつてのように舌打ち をすることもなかったが、俺なんか知ったこっちゃないと言われているようで、 とても胸が苦しく、苛立つ。 俺の方でも、妹に大嫌いと言われ、なのに自分の気持ちを自覚してしまったあの 日から、恐ろしくて碌にあいつの顔を見ることも出来なかった。 両親は俺たちを心配そうに見つめているし、親父には呼び出されたこともあった。 だが、どうすることもできず、俺は『大丈夫だ』と繰り返すしかなかった。 麻奈実にも毎日のように心配させちまってる。 黒猫にも、赤城にも、ゲー研の連中にも―――俺はなんとも情けない状態だった。 そしてそれは、妹も同じだったらしい。 その日、あやせに呼び出された俺は、いつもの公園にやってきた。 あやせとは、桐乃の偽彼氏騒動の後に電話して以来、連絡もとらなければ会っても いなかったから、久しぶりのご対面だ。 いい機会だから、ここは大好きなあやせに癒してもらおう。俺はそう思っていたの だが―――――。 「こんにちは、お兄さん。………………酷い顔。」 「う、うわああああぁあぁあぁああああああああああん!!!!!」 号泣。 その場で崩れ落ち、俺の精神にとどめを刺してくれやがったあやせの前で大声で 泣いてやった。 ひでえ。あんまりだよ。 お、俺はもう死んだ方がいいのだろうか。妹に大嫌いと言われ、その親友からは 会うなり『酷い不細工ですね』と言われてしまったうわあああああああああ。 「お、おおおおおおお、お兄さん!?なんで急に泣いてるんですか!!?」 「ぐすっ……ひぐっ……だって、お前が、『酷い不細工ですね。見苦しいので死んで 下さい』っていうから。…………うおおおおおぉぉぉおおおん。」 子供のように泣きじゃくる俺であった。 「ご、誤解です!!私はただ、お兄さんの顔色が悪いから心配で……。」 「え!?そ、そうなのか?」 「そうですよ。ですから誤解なんです。」 一瞬で復活した俺は、立ち上がってあやせたんのやわらかな手を取り、甘く囁く。 「俺のこと心配してくれたんだな。嬉しいぜ、あやせ……。」 「そっち!? ていうか、きゅ、急に手を握らないでください。気持ち悪い! セクハラで訴えますよ!?」 「で、今日は何の用だ?話してみろ。」 「さらっと流した!? ま、まったく、いつもいつもあなたって人は……。」 俺に向き直ると、あやせは途端に悲痛な面持ちになる。 「実は、桐乃のことでご相談があるんです。」 「…………………桐乃に何かあったのか。」 俺は自分でも驚くくらい、低い声を出していた。 あやせは、はっとして、俺を見上げて話を続ける。 「桐乃、何かにとても苦しんでいるみたいなんです。 実は以前にも、何かボーっとしてたり、機嫌が悪そうなことはあったんですけど、 今度のは全然、様子が違ってて……。 いつも落ち着きなくて不安そうなのに、仕事や部活の時だけは、必死なんです。 とても。見てて痛々しいくらいに。」 俺は黙ってあやせの話を聞き続ける。 あやせも相当追い詰められているようで、いつもは落ち着いた声が震えて、一気に まくしたてて喋っていた。 「私、何があったの、私でよかったら力になるよって、言ったんです。でも桐乃、 全然相談してくれなくて。日に日に憔悴していってるんです。クラスやモデル仲間 のみんなも、桐乃が頑張りすぎておかしくなっちゃったんじゃないかって、そう 言ってて………。何とかしたいのに、もう、私ではどうしようもないんです!!」 よほど桐乃が心配なのだろう。最後は涙声になっていて、息も荒かった。 「あやせ、落ち着け。」 「す、すみません。でも私、心配で……。 せめて、何が原因で桐乃がああなってるのか知りたくて……。」 それで俺を呼んだわけか。 「桐乃の様子がおかしいのは、俺も知っている。 でも、悪い。何が原因なのか、俺にもよく分かっていない。 ただ―――――。」 あやせは黙って俺の話を促す。 「ただ、きっと俺が原因なんだろうな。」 「どういう……ことですか?」 「さっきも言ったろ。俺にもよく分からねえんだ。」 「………いえ。私も、きっとそうなんじゃないかって、思ってました。」 「え?」 「お兄さん。ここ最近の桐乃とお兄さんのことで、私が知らないこと、教えてください。」 「……ここ最近の俺たちのこと?」 「はい。……言っておきますが、どんなことでも、包み隠さず全て、ですよ?」 あやせの目からは光彩が消えていた。 俺はあやせに、ここ数日の出来事を全て話した。 桐乃の偽彼氏騒動の発端から、顛末。 黒猫に告白されて、桐乃に後押しされて付き合うようになったこと。 だけど俺の不甲斐無さからフられてしまったこと。 様子のおかしい桐乃を宥めようとして、大嫌いと言われてしまったことも全て。 本当は包み隠すべきこともあったのだが、それは出来なかった。 俺自身、追い詰められていて、じっと黙って聞いてくれるあやせを前にして、歯止めが 聞かなかった。俺は情けなくも、涙を流しながら、話を終えた。 あやせがハンカチを差し出してくれる。 「すまない、あやせ。ハハ、情けないよな、俺………。」 「そうですね。情けないです。でも………でも、よく分かりました。」 「え?」 「やっぱり、やっぱり桐乃がああなってしまったのは、お兄さんが原因です。」 「どういう………ことだ。」 「私、この間から不思議に思っていることがありました。藤間社長の件です。」 藤間美咲。 化粧品ブランド『エターナルブルー』の女社長。 桐乃をスカウトして海外に連れ出そうとしていた張本人。 思えば、ここ最近の騒動の発端も、彼女に違いない。 「お兄さん。桐乃の嘘の彼氏として、藤間社長に会ったと仰ってましたよね。」 「ああ。」 「それって、本当に藤間社長本人だったんでしょうか?」 ……………は? 「すまんあやせ、分かるように説明してくれないか。」 「桐乃があの人にスカウトされていたのは本当です。御鏡さんに説得を頼んでいたらし いのも本当です。でも、お兄さんが藤間社長に会ったというのはきっと嘘です。」 「お、俺は嘘なんて吐いてないぞ。」 「そうじゃありません。きっと嘘をついたのは…………桐乃です。」 ますます分からない。桐乃が、『美咲さんに会った』と嘘をついた? 「ごめんなさい。言い方が悪かったですね。私が言いたいのは、お兄さんが喫茶店で 会ったという藤間社長は、偽物だってことです。」 「偽物って………どういうことだよ。」 「まず、日本のエタナーの支社があるのに、わざわざ駅前の喫茶店で、っていうのが 不自然です。それに―――――――。 それに、その日は彼女、別件で違う場所にいたはずです。」 信じられない俺を置いて、あやせは続ける。 「私、桐乃がまた海外に行ってしまうなんて嫌だから、なんとか藤間社長を説得したく て、コンタクトを取るために、彼女の動向を探っていたんです。桐乃に接触したかを 調べるために、最近の過去の動きも。」 「それで、お前の掴んでた情報と、俺たちが会ってたことが食い違うと?」 「ええ。」 訳が分からない。 あの美咲さんが偽物?一体何がどうなってやがる。 「お兄さん。桐乃に、か、『彼氏になって』って言われたんですよね?」 「ああ。言われた。説得するのに必要だからってな。」 だがそれは嘘だった。ならどうして桐乃はわざわざ俺を偽の彼氏に仕立て上げて、偽物 の女社長に会わせたりしたんだ? 困惑する俺に、あやせは言い放つ。 「それ、きっと桐乃は、本気だったんじゃないかと思うんです。」 ドクン。心臓が跳ね上がる音がした。 「なに、を…………。」 「そうじゃなければ、辻褄が合いません。桐乃が嘘をついてお兄さんを連れ出したのも、 お兄さんと喧嘩になって、今度は御鏡さんを嘘の彼氏にしたのも。」 俺はどんな顔をしているだろう。 正直、頭の中が真っ白だ。口の中がカラカラで、喉が熱い。 『―――あんた、あたしの彼氏になってよ。』 『あの……だ、ダメ?』 『違う! っ……違う! あんたのことなんか……あんたのことなんか……好きなわけ ないじゃん! なに勘違いしてんの!?』 あれが、あれが本気だったっていうのか。 桐乃の様子がおかしかったのも、顔面蒼白だったのも、その後すぐに怒りだしたのも、 全部、全部本気で……。 つまりそれは、あいつが俺のことを―――――。 なのに俺は、あいつに何を言った? どんな顔を、していた? 「き、りの…………。」 俺は信じられない気持ちと、後悔と、罪悪感を込めて桐乃の名前を呟く。 俺ってやつは、最低だ。 シスコンだの、妹が心配だの、可愛くてしょうがないだのと、何を言ってやがるんだ。 結局俺は、あいつの気持ちなんて、これっぽっちも理解していなかったというのか。 今にして思えば、黒猫は、きっとこのことを言いたかったんだろう。 他人の本心を、見ようと努力しなければならない―――――――。 そう俺に告げたあいつは、きっと桐乃の本音に気付いていたんだろう。 急にあんなことを言い出したのも、俺が気付いていないことを指摘するためで。 だからこそ、彼女にとって『もっとも望ましい結末』のため、俺を送り出してくれた。 俺と別れることまでして。 「じゃあ、じゃあ俺との偽装デートも………。」 「ええ。きっと、同じことだと思います。それに、彼氏がいるなんて言い出したのも、 きっと同じで―――――。」 『―――今度紹介してあげよっか? あたしの彼氏』 『兄貴』に構って欲しくて、ついつい『妹』が言っちまった台詞―――。 夏コミの日の瀬菜と桐乃の会話から、瀬菜の言葉を桐乃にあてはめて、俺は安心してい たことを思い出した。 だがきっと、そんな可愛げのある、ちょっとしたいたずらじゃなかったんだろう。 今や俺は完全に自覚している。俺は桐乃が好きだ。大好きだ。 あいつに彼氏がいるかもって聞いて、ムカついていたのも、心配だったのも、あいつを 彼氏と別れさせようと、無茶苦茶やっちまったのも全部――――。 全部、俺が桐乃を好きだからだ。 正体不明だった気持ちは、しかしそれがごく自然な ことであるように、俺の心にの中に落ち着いている。 だが俺は、どうすればいいんだろう。 桐乃は妹だ。誰が何を言おうと、俺たちがお互いをどう思っていようと、変わらない。 俺と桐乃は兄妹で、家族なんだ。 黒猫に指摘されて、さっさとケリ着けちまうべきだった気持ちに、まるで整理がつかな かったのも、俺と桐乃が、兄と妹だからだ。 近親相姦―――――。 いや、そこまではいかなくとも、限りなくそれに近い俺の感情。 「…………あやせ、俺は―――――――。俺はどうすればいいと、思う。」 目の前にいる少女なら、きっと俺の気持ちを否定してくれる。 兄妹でそんなのはダメだと、叱責してくれるはずだ。 どこか縋るような気持ちで、あやせに問いかけたのだが、 「らしくないですよ、お兄さん。 いつものあなたなら、もうとっくに、桐乃を助けに 行ってるはずです。」 「――――――え? あ、あやせ、お前………。」 あやせは俺に穏やかな笑顔を向ける。 その笑顔はさながら、俺の心を救ってくれる、 本物の天使のようだった。 「今だから言っちゃいますけど、私、お兄さんが本当は変態なんかじゃないって、実は 気付いていました。それもずっと前から。……なのに、桐乃の趣味のことに折り合い をつけるために、ずっと自分の気持ちを騙していたんです。」 「そう、だったのか………。」 「はい。散々酷い事を言っておいて、今更かもしれませんが、謝らせて下さい。 本当に、御免なさい。お兄さん。」 「それは、それはいいんだ。 俺の方も、ずっとお前に嘘をついていて、悪かった。」 そう。それはいい。 誤解は嘘だったかもしれないが、何だかんだで、あやせは俺のことを頼りにしてくれて いたし、俺もそれを悪くない気持で迎えていたのだから。 だが、今やあやせの誤解は、本物になりつつある―――――。 「あやせ、でも俺は―――。」 「お兄さん。………お兄さんは、桐乃のこと、どう思っているんですか?」 核心を突く問いかけだった。 言えるはずのない俺の感情。あやせの誤解を、偽物から本物へと変えてしまう俺の本音 を、どうして言うことができるだろう。 なのにあやせは、笑顔で俺の背中を押してくれる。 「お兄さん。 私は、お兄さんが何を言っても、絶対に怒ったりしません。 だから言って下さい。 きっと、誰かにそれを言うのは、今のあなたにとって、 とても大切なことのはずですから。」 穏やかな微笑み。あやせの笑顔はまるで、彼女の方が年上で、俺の姉か、母親のようで もあった。その笑顔に、俺の心は決壊する。 「俺は、俺、は――――――。」 「俺は、桐乃が大切だ。心配で、可愛くって、しょうがない。あいつが俺のところから いなくなるなんて、どんな形にしろ、絶対に嫌だ。何がなんでも、絶対に手放したく ない。だから、俺は―――――――!!」 最後の一言。 しかし、それはあやせによって阻まれる。 あやせは俺の唇に指をあて、はにかみながら告げる。 「よく分かりました。なら、その先は、桐乃本人に言ってあげて下さい。」 「あ、あやせ、お前―――――。」 「ふふ。ほんと、お兄さんってばとんだシスコンですね。でも、不思議です。私は、 それが悪い事だなんて、これっぽっちも思わないんですよ。」 そう言ったあやせの表情は、俺の胸に力強い勇気を与えてくれた。 何があっても、きっとこいつは、俺と桐乃の味方でいてくれる―――そう思えた。 あやせと別れた俺は、今桐乃の部屋の前にいる。 このすぐ後のことや、その先のこと――――。考えるべきことは、山ほどあるだろう。 なのに今の俺は、とにかく桐乃に会って話をすることしか頭にない。 頭をからっぽにしたまま、家に飛んで帰ってきた。 覚悟はいいか?――――――――――俺は出来てる!! ……ガチャ!! ノックもせずにいきなり扉を開けてやる。鍵はかかっていなかった。 ベッドの上で寝そべっていたらしい桐乃は、驚いて起き上がった。 俺はそんな妹の傍に、早足で近づく。 「ちょ、ちょっと何なのイキナリ!?」 「桐乃。お前に話がある。」 「は、はあ!?急に人の部屋に押し入っておいて、何なの!? 意味分かんないんです ケド!!」 「うるせえ。黙れ。」 俺が低い声を出すと、桐乃は目を見開いてビクッと震える。 「いいから、聞いてくれよ。大事なことなんだ。」 「……分かった。座んなさいよ。」 桐乃はベッドに腰掛けたまま、すぐ傍にクッションを放る。 俺はその上に座り込み、両ひざに手をついて、切り出した。 「お前が聞きたがってたこと、教えてやるよ。」 桐乃は再び驚いて、そして目を伏せる。 俺は構わずに続けた。 「俺は、黒猫にフられちまったんだよ。」 桐乃は眉根を寄せて、やっと俺の顔を見る。 妹の目には隈が出来ていて、どことなくやつれているように見えた。 あやせが言うように、憔悴している様子だ。 「……なんでよ。あいつ、あんたのこと好きだったんでしょ?」 「ああ、それは間違いないと思う。」 「じゃあなんで!?あんただって、あいつのこと好きなんでしょ!?」 「ああ。好きだよ。」 桐乃は膝の上の手を固く握りながら、必死の形相で小さく叫ぶ。 「意味分かんない!じゃあなんで!?」 「それは―――――。」 「それは、俺があいつを一番に見てやれないからだ。あいつは、それじゃあ納得出来 ないんだとさ。そんでフられた。」 「何よ、それ………。」 「意味分からねえか?俺もそう思った。だけどあいつは言うんだ。自分の恋人でいたい なら、あいつを一番大事だと言える様に、俺の気持ちに決着をつけて来いって。 そう言って、俺の背中を押してくれたんだ。だから―――――。」 俺は正直恐ろしい。 言い出したなら、もう戻れない。 どうあっても、結果がどうなろうと、もう桐乃とは普通の兄妹でいられなくなる。 俺の好きな平凡な日常なんて、もう二度と訪れないだろう。 それに、やはりどこかで、桐乃が俺のことを好きだなんて信じられなかった。 だから恐ろしい。ここまで来てしまった上に、こいつが離れていくのが恐ろしい。 ―――――だけど。 だけどな、俺はたった一人でここまで来たわけじゃない。 黒猫は俺の本当の気持ちに気付かせてくれた。 あやせは、怯える俺の背中を押してくれた。 俺の両肩には、2人の想いが込められている。大切な親友への想いが。 だから、絶対に逃げ出したりは出来ない。 俺は立ち上がり、驚く桐乃の肩を掴んで叫んだ。 「俺は言うぞ、桐乃。 よ―――――っく聞けよおおお!!!!」 「あ、あんた何を……。」 すぅっと息を吸い込み、一気にまくしたてる。 「俺はお前が好きだ!大好きだ!!お前がいないと、生きていけないくらい、お前の ことが大好きだ!!愛してると言ってもいい!!! いいか、もう一度言うぜ。 俺はお前が好きだああああああああああああ!!!!!」 一気に言い終わると、緊張と不安もあって息が荒くなる。 桐乃は目を丸くして、信じられないような顔をしている。 全身をか細く震わせて、 ただただ俺の顔を見ていた。 「お、おい。桐乃?」 「……と?……ほんとに? 本気なの? そんなこと言って、どういうつもり?」 「どうもこうもねーよ。俺はお前が好きだから、もう絶対手放す気は無いって、 そう言ってるんだ。」 「でも、だって……あたしたち、兄妹だよ? あのときは、あんたもそう言ってた じゃん。気持ち悪いみたいな顔して、何言ってんだーって……。なのに……。」 桐乃は立ち上がり、胸倉をつかんで俺を睨みつける。 「なんなのよあんたは!! あたしはどうすればいいのよ!? あたしは、あんたの 妹だから、……だから、黒いのと付き合うのだって応援してあげたじゃん!!!! 服もデートコースも選んであげて、毎日デートさせて!!………なのにあんたたち 別れるし…………もう、どうしていいか分かんないって思ってたら、今更そんな、 そんなこと言って!!!あんたにとって、あたしは妹なんでしょ!?妹だから、い ろいろ助けてくれて、優しくしてくれて……それだけなんでしょ!!?だから、だ からあたし、あたしは…………。」 「桐乃…………。」 そういう………ことかよ。 つまりこいつは、あれだけの騒動を起こしても、てんでこいつの気持ちに気付かない 俺を振り切るために、黒猫の背中を押して、俺たちが付き合うようにしたのか。 「俺と黒猫が付き合えば、お前は今までどおり、俺の妹で、黒猫とは仲良く友達とし てやっていける………そういうことか。」 「……そうだよ。 あたしとあんたは兄妹で、あいつはあたしの友達だから。 だから、それが一番いいと思った。 だって、それが普通じゃん? あたしもあんたも、黒いのもみんな幸せ。そういう将来が、一番いいと思った。 それに、あたしのせいで、みんなに迷惑かけたから………。」 「だからお前が大人しくしていることにしたってわけか。………そうだな。それが普 通だし、上手い落とし所だと思う。」 確かに拗れていた俺たちの関係。 その解決策として桐乃から提示された、俺たちの将来像。 きっとそれは、普通で、楽しくて、みんな幸せになれる、理想的なものだろう。 だけどな。 「悪いが桐乃。そんな将来はもう来ない。なぜなら―――。」 心の中で、今も俺が戻ることを待っていてくれているだろう、黒猫に謝罪する。 そして、俺たち兄妹のために、俺を送り出してくれたことに感謝する。 「俺はもう、黒猫とは恋人にはなれない。俺が好きなのはお前だからな。」 「――――っ。」 またも、桐乃は驚いて目を丸くする。 俺の胸倉も離して、俯いてしまった。 「じゃあ、あいつはどうなんのよ?あいつは、あんたのこと好きなんだよ? あたしと、あんたと、あいつと沙織と………もう、みんなで遊んだり出来なくなる かもしんないじゃん。あんた、それでもいいの?」 沙織にサークルクラッシャーと呼ばれてしまう未来。 一度は回避されたはずのその結末を、桐乃は口にする。 だが、そんなことには、絶対にならない。なぜなら――――。 「てめえ、もっと友達を信じろよ。」 「………え?」 「黒猫は言ってたぞ。お前のこと大好きだって。お前のこと妹みたいに思ってるって。 お前が居なくなった時は寂しかったって、そう言ってた。」 「あいつが……?」 桐乃の頬を涙が伝う。 その涙を拭ってやることはせず、続けて言う。 「そうだよ。なのにお前は、そんな優しいあいつが、俺たちから離れて行っちまうって 本気でそう思うのか?あいつのこと、信じてやれねーのかよ。」 「そ、それは……………。」 「妹ってのはな、手がかかるんだよ。ムカつく奴なんだ。でも心配で、放っておけない もんなんだよ。だから、あいつがそう思ってる限り、お前たちの仲がどうこうなんて なるわけねえ。」 「あ、あんたがそーいうコト言う!?じ、自分は、ずっとずっと、あたしのことほった らかしにしてたくせに!!!」 「……それについては、何て謝っていいか分からん。でも、あいつは俺じゃない。 だから、あいつのことは信じてやってくれ。」 桐乃は、グスっと鼻を鳴らし、少し黙っていたが、 「………分かった。あいつのこと、信じる。」 「……そっか。良かったぜ。」 「でも、あんたのことは許してやんない。」 「……………おう。分かってる。」 「は?何それ。あんた諦めんの?あたしに許して欲しくないわけ?」 それはいつも通りの、ムカつく桐乃の態度だった。 妙に懐かしい気がして、 「そ、そんなことねーよ。何だよ。どうして欲しいんだ?聞いてやるから言ってみろ。」 「うん。じゃあ……。」 ぼすっと、俺の胸に頭から倒れこんでくる桐乃。 なんとか支えてやると、甘い香りと柔らかな感触がして、ドキッとしてしまう。 「あたしのこと、今までの分も、ずっと、ずう~~~~~~~っと、大事にするコト。 そしたら、許してあげなくもない。」 「お、お前、それって……。」 俺に言わせず、桐乃は問いかける。 「ね。あんた、これからは、あたしの彼氏だかんね。分かってる?」 「―――――。」 その言葉に、俺の心臓は信じられないほど締め付けられる。 「あと、二人っきりの時は『京介』って呼ぶから。」 「ま、まあ好きにしろよ。」 「デートは、こないだみたいのじゃヤだからね。ちゃんと勉強しておくこと。」 「……努力するよ。」 「メールしたら、すぐ返事して。あんま他の女にデレデレしないで。」 「……………おう。」 メンドくせえなあ急に。でもまあしょうがないかね。 桐乃はよし、と呟き、俺の服をきゅっと掴んで顔を上げ、最後の審判を下す。 「最後に確認するけど、あんたは、あたしのことが好き。『妹』ってだけじゃなくて、 『あたし』が好き。………………間違い、ない?」 もう、二度と平凡な日常はやってこない。 そう警鐘をならすかのような心臓の音が煩わしかった。 だが、そんなものじゃ、全然、俺を止めるには足りない。 「――――――ああ。俺は『桐乃』が好きだ。」 「………………………………………う、」 う? 「うわああああぁぁあぁああああああぁああああ!!グス、ぅううわああああああ……」 桐乃は俺の背に腕を回してしがみつき、子供のように泣きじゃくる。 それはきっと、こいつの気持ちの大きさなのだろう。そう思って、今更ながら妙に照れ くさくなる。 「お、お前……な、泣くなよ馬鹿。」 俺はおろおろとしてしまい、泣いている桐乃の頭を撫でてなんとか宥めようとしていたが、 とうとう妹は泣きやまず、俺は桐乃が泣きやむまで、ぎゅっと抱きしめてやるのだった。 桐乃がこんなだからか、俺は考えてしまう。 俺たちのこれからのこと、将来のこと―――――。 きっと楽しい事ばかりじゃないだろう。どうあっても、俺と桐乃は血のつながった、実の 兄妹なのだから。 それでも、もう二度とこいつをこんな風に泣かせたくない。そのためだったら何だって してやるさ。 平凡な日常にそっと別れを告げ、俺はこれからの日々に思いを馳せる―――――――。 FIN 435 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/02/13(日) 00 35 05 ID ltafZec/0 [1/11] オリジナルサイズ
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/526.html
400 名前:【SS】天使VS堕天使[sage] 投稿日:2011/04/05(火) 19 03 39.19 ID Cppe1vmdO [1/2] 【SS】天使VS堕天使 概要:原作4巻第1章の続き。 SPメルルフィギュアを見つけてくれた黒猫と沙織に、あやせがお礼をする。 原作の設定多少改変。 桐乃登場無し。色恋無し。 桐乃スレなのに桐乃の出番はありません。長文駄文です。 黒猫もあやせも大丈夫な方にしかお勧めできません。それでもよければどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 俺は今、秋葉原のとあるカフェに来ている。 オタク要素など全くない、至って普通の喫茶店ってやつだ。 俺の隣にはあやせ、正面は沙織、その隣には黒猫という形で席に着いている。 なぜこの四人で集まっているかと言うと、話は数日前にさかのぼる。 ―――――――――――――――――――― 「お兄さん。今日はお願いがあって来ました。」 俺はあやせにメールで呼び出されて例の公園へ来ていた。 前回もこのパターンだったな……。また面倒な事に巻き込まれるのか……。 と思いつつも、今回は『お願い』という台詞に淡い期待を抱いていた。 この間は頼まれていた桐乃へのプレゼント探し、頑張ったもんな〜俺。 結果、桐乃は大喜びしてくれたみたいだし。俺の株も急上昇したことだろう。 「おまえが俺にお願い?何の話だ?なに?俺に抱きしめて欲しい……とか、そんな話か?」 「い、いきなり、ば、馬鹿な事を言わないで下さい!何で私がお願いしてまで あなたに…だ、抱きしめて貰わなくてはならないんですか!?冗談もいい加減にして下さい!」 「俺は本気だぜ?」 「……………………。」 「……そんな目で俺を見ないでくれ……。」 「……お兄さんって結構軟派なんですね……。 他の女性にもそういう事を言ってるんですか?麻奈実さん…とか。」 「麻奈実?おまえあいつの事、知ってたっけ?」 「この間お会いしたばかりじゃないですか。」 そういえば、道でばったり会って自己紹介してたっけか。 「ないない。あいつとはそういう関係じゃねぇし。」 「……じゃあ、夏コミ…でしたっけ?桐乃の後ろにいた…黒い服を着た娘とか、眼鏡の方とか……。」 「やっぱり気が付いていたんだな。あの二人の事。」 「はい……。最近、桐乃がその娘達の話をしてくれるんです。自分のオタク趣味を話せる 数少ない友達だとか。そういえば桐乃、怒ってましたよお兄さんの事。 『兄貴、あいつらに色目使って超キモいんだけど。』って。」 「ま、待て待て、待てーい!!それじゃまるで俺が妹の友達を片っ端から口説いてる変態みたいじゃねぇか!」 「違うんですか?」 「ちげーよ!!」 「現に今だって私のこと、口説いていたようですけど……。」 「それは間違いない。」 即答するとあやせは諦めたように、 「……まあ…この話は今はいいです。それより、私のお願いの件なんですけど。」 「あぁ、俺に抱きしめて貰うって話な。」 「ブチ殺しますよ。」 おーこわ。こいつ相変わらずキレるとすぐ殺すって言うのな。 「ごめんごめん。で、お願いってのは?」 「……はい。えっと、さっきの話のお二人に会わせて貰えないでしょうか?」 「は?なんで?おまえ、あの二人に会いたいの?あいつら、おまえが嫌いなオタクだぞ?」 「……桐乃が言っていたんです…。この間、お兄さんにご相談した桐乃へのプレゼントのアドバイスをしてくれたのは、 あのお二人じゃないかって。『あの低脳兄貴が私のドストライクなプレゼント、思いつくわけないよね。』と。」 ……なんて酷い言い草だ……。あやせも低脳とか、言わんでもいいだろう……。 「桐乃、あのプレゼント本当に喜んでくれたんです。貰ったフィギュアもそうですけど、 私がそういうの嫌いなのに、これを選んでくれた事を。 ですからアドバイスをして下さったお二人に一応お礼を伝えたくて……。」 まだ桐乃のオタク趣味を完全に認めた訳ではないはずなのに、あいつらに会いたいなんて 結構義理堅い真面目なやつだ…。てゆーか俺にお礼はないの?ねぇ!? ……しかしなぁ……沙織はともかく、あやせと黒猫を会わせたら絶対修羅場になるよな……。 それに他にもなんか嫌な予感が……。 「……だめ……です……か?」 な…なんだよおまえ、上目使いでそんな顔すんなよ!か…可愛いじゃねぇか。 そんな顔されたら俺はOKするしかなくなっちまうだろ!!てか、抱きしめてぇ!ハグしてぇ!ペロペロしてぇ!! 「よ、よし。わかった。」 「あ…ありがとうございます!」 にっこり笑うあやせたん。マジ天使。ペロペロペロペロペロペロ(妄想) 「……。お兄さん……。顔……気持ち悪いですよ……。」 「気にするな。」 「……それで、あのお二人のお名前を伺っておきたいんですけど。」 「名前?ああ、黒猫と沙織な。」 「……黒猫?本名…ですか?」 「いや、ハンドルネームってやつだ。インターネット上で使ってる…まぁニックネームみたいなもんだな。」 「…わかりましたけど……じゃあ本名は何とおっしゃるんですか?」 「……。知らん。」 「はぁ?本当に知らないんですか?えっ、桐乃は知ってますよね?」 「んー多分…桐乃も知らないんじゃないか?」 「…じゃあ…沙織さんは?…苗字とか…。」 「沙織?苗字?……バジーナ?」 「なんですかそれ!?真面目に答えて下さい!」 「本当に知らないんだ。てゆーか『沙織』が本名かどうかもわかんねーし。」 「…まぁいいです。オタク同士っていうのは、そういうものなんですか?」 「ネットで知り合ったってのもあって、俺達ハンドルネームしか知らんのよ。 それに出会ってからの日も浅いしな。これからって感じか?」 「わかりました。えっと…黒猫さんと沙織さんでしたよね?」 「おう。黒い服の方が黒猫で、眼鏡の方が沙織な。」 「はい。」 「じゃあ、あいつらに話通しておくよ。日取りはまた後日連絡するから。」 「はい。よろしくお願いします。」 というやり取りを経て冒頭の日に至るわけだ…が…。 ―――――――――――――――――――― 俺はまず、あやせを黒猫と沙織に紹介した。 「桐乃の親友の新垣あやせです。桐乃とはクラスメイトで、モデルのお仕事も一緒にしています。」 それからあやせに二人を紹介した。 「……よろしく。」 「沙織・バジーナでござる。」 相変わらず黒猫は初対面のやつに愛想が悪い。沙織もいきなり『バジーナでござる。』はないだろう…。 あやせもさすがに顔が引きつっている。しかし今日は二人にお礼を言いに来たのだから、意を決した様に本題に入った。 「今日は、お時間を作って頂いて申し訳ありません。私のために色々プレゼントを探して頂いたそうで…。 本当にありがとうございました。桐乃、とっても喜んでくれました。」 「いえいえ、礼には及びませぬぞ。そもそも、あのフィギュアを手に入れるのは 我々には無理な代物なので、あやせ氏の作戦勝ちと言ったところでしょう。」 「…そうよ。あなたにお礼など言われるような事をした憶えは無いのだけれど。 あなたのため?フッ…。私は“桐乃”のために動いていただけよ。こちらこそお礼を言いたいわ。 私も“親友の桐乃”の喜ぶ顔を見るのは、とても嬉しいもの。」 うげっ……。また始まったよ、こいつの意地悪癖が。 …まあ、あやせもオタク嫌いですオーラを発しまくっているからな……。 だがあやせも負けじと、 「いいえ。やはりお礼を言わせて頂きます。私では“あんな物”絶対思い付かなかったですし。 それで私のこと見直したって言ってくれましたし。」 「あなたのこと見直したですって?大体あの大会に出て優勝したのは、あなたのお友達でしょう? あなたがタナトスで出場しても十分優勝が狙えたはずなのに。」 「私が出場するよりも優勝できる可能性の高い娘がいたからです。」 「違うわね。本当に“桐乃”に何かしてあげたいと思うのなら、自分で何とかするはずよ。」 「わ、私があんな…い、いかがわしい服を着て出場できるわけないでしょう!! 桐乃に見られたら軽蔑されるかもしれないじゃないですか!!」 …だから桐乃は絶対大喜びすると言っているのに…。もちろん俺も大喜びしちゃうけどね! 「私はあなたみたいなタイプが嫌いなの。自分の事しか考えていないような女は。 “桐乃”がどう思うかより、自分がどう思われるかの方が大事なようだし。」 「うっ……ぐっ……。」 痛い所を突かれたな、あやせ。だが…そろそろ止めてやらないとな。 「おい黒猫もうその辺にしとけよ。ちょっと言いすぎだぞ。」 「話に割り込まないで頂戴、この人間風情が。殺されたいの?」 うぉ…、目が本気だよこいつ。何故か熱くなってやがる。…やっぱりこうなっちまったか…。しょうがねぇ。 沙織も心配いらないと言いたそうな顔をしているから、もう少し様子を見守るとするか……。 「憶えているかしら?あなたと私達は一度会っているのを。」 「夏…コミ…でしたよね?あの時…桐乃の後ろにいた……。」 「そうよ。あの時、私達は“あの女”と夏コミに行った帰りだったのよ。 そして偶然会ったあなたにあの女は私達のことを『知んないよ、あんなキモい連中』と言ったのよ。」 ……やっぱり聞こえていたんだな……。ごめんな……。 「それは桐乃が私にオタク趣味を知られて嫌われたくないと思ったから言った台詞ですよね? 親友なら嫌われたくないと思うのは当然じゃないですか。」 「だからあなた達の友情は薄っぺらいのよ。実際その一件で、あなたは絶交したのでしょう? それでも本当の親友と言えるのかしら?」 あやせは顔を真っ赤にして俯いてしまった。 「あなたは見たところ、お友達関係には困っていなさそうね。最近の言葉で言えば『リア充』とでも言うのかしら? それに比べて私は不器用で、あなたみたいにうまく立ち回るのは苦手なの。でもね、沙織とあの女は、 自分のありのままの姿を受け入れてくれた、初めてできた友達なのよ。」 …黒猫…。こいつ、頭に血が上り過ぎて俺と沙織がいることを忘れてやがるな。 『初めてできた友達』……か。なんとなくそうじゃないかとは思ってたけど、 改めてカミングアウトされると、胸の奥が締め付けられるように苦しい……。 ふと沙織を見ると、呆然と正面を向いて抜け殻のようになっていた。 黒猫はさらに続ける。 「あの女はね、私の好きなアニメ『マスケラ』のDVDを全話視聴してくれたのよ。 自分の嫌いなアニメにも拘らず…。あと…私の書いた小説と漫画も―――。」 と言った所で黒猫は話すのをやめてしまった。そして驚いた様子であやせの方を見ながら 「あなた……。」と呟いた。 俺は何事かと思いあやせの方に目をやると、あやせは大粒の涙を流して泣いていたのだ。 「あ…、あやせ?」 俺は動揺しながらもあやせを慰めようとしたが、事情が分からないのでかける言葉が見当たらない。 沙織も俺と同じようにオロオロしている。しかし、恐らく泣かせたであろう黒猫は 意外にも冷静にあやせの顔を見つめている。あやせが口を開くのを待っているようだった。 ――――重い沈黙が流れる――――。 しばらくするとあやせは心の整理を付けたのか、ひとつ大きく息を吸い話し始めた。 「ご…ごめんなさい……。いきなり泣き出したりして……。実は…私も初めての友達が桐乃なんです。 私は小学校の頃から人と話すのが苦手で、いつも一人で本を読んだりしていました。 中学に入ってもクラスに馴染めず、皆の輪に入れませんでした……。 ……友達が欲しくない訳じゃない……。 ……友達と楽しくお喋りとかしたい……。 いつもそう思っていました。でも誰でも良いと言うわけではなく、そうなりたい相手がいたんです。 ――それが桐乃でした――。 桐乃はクラスでも特に輝いていました。眩しいくらい。成績優秀、容姿端麗、スポーツ万能。 男女問わず人気者で、先生達にも一目置かれていて、いつもクラスの中心でした。 いつも一人でいる私に話し掛けてくれたのは桐乃だけでした。 でも…、人気者の桐乃にとって私は、その他大勢でしかなかったんです……。 もっと仲良くなりたい…。 桐乃にとって一番になりたい…。 でもきっかけが掴めない…。 それで私はモデルの仕事をしようと思ったんです。桐乃がモデルをしていたので、 一緒に仕事をすればもっと仲良くなれる…と。 …私がモデル……。もちろん抵抗はありました。自信なんて全然無かったですし……。 でも桐乃がいつか私に、『“新垣さん”って肌綺麗だよね。髪も黒くて艶々だし。 少し髪型変えて表情の作り方とか覚えたら、すっ……ごく可愛くなると思うよ。』 と言ってくれたのを思い出し、勇気を振り絞って桐乃に仕事の紹介をして貰えないかとお願いしたんです。 すると桐乃はなぜか嬉しそうに『あたしのコーチは厳しいケド?』と言い オーディションへ向けて特訓が始まったんです。 桐乃のアドバイスで髪型を変え、鏡に向かって笑顔を作るとそこには今までとは別人の自分がいました。 込み上げる高揚感。これから変わるんだという期待。 そして何より毎日桐乃と一緒にいられる嬉しさでいっぱいでした。 桐乃は笑顔の作り方、姿勢、歩き方等――。一生懸命教えてくれました。そしてオーディション前日…、 『よしっ完璧。これで合格しなかったらあたしのせいだから』 桐乃の最後の一言が、私に自信と勇気もくれたんです。 その言葉を胸にオーディションに挑み、無事合格することができました。更に 『“あやせ”は奥手だから、どっかに所属したほうがいいカモ。』 と、事務所まで紹介してくれたんです。そして今、こうして変わることができた自分がいる……。 あの頃桐乃に出会っていなければ今、どうなっているのか分かりません。 さっきの黒猫さんの話を聞いて昔の自分を思い出し、取り乱してしまいました。すみません……。 黒猫さんと私って似ていますね。何だか親近感がわいてきました。」 あやせは泣き顔から穏やかな笑顔に変わっていた。 「な、何を言っているのかしら?言っておくけれど、私とあなたは住む世界が違うのよ。 親近感とか…おこがましいにもほどがあるわ……。」 明らかに照れている黒猫を見て、俺と沙織は 「「ぷっ…。くっくっ…。」」と、思わず噴き出してしまった。 「…また…この莫迦二人はくだらない妄想をしているようね……。」 捨て台詞を吐いた後、赤い顔で下を向き、口を尖らせてジュースを飲む黒猫が妙に可愛かった。 …それにしても、あやせと黒猫にそんな過去があったなんてな……。そりゃあやせが桐乃のこと大好きな訳だよ。 なんだか俺は桐乃を誇らしく思ってしまった。 あやせの告白で重くなっていた空気が軽くなったところで沙織が 「本日拙者、あやせ氏にプレゼントを用意していたのでござる。」 リュックから封筒を取り出すと、あやせに手渡した。 あやせは驚いていた。俺も驚いた。お礼される方がプレゼントを用意するって……、 まぁ…沙織はそういうやつだよな。 「あ…ありがとうございます。えっと…、今見てもいいですか?」 あやせは不思議そうな顔をしたまま聞いた。 「もちろんでござる。」 むむっ!今、口元がω←こんなふうになったぞ。怪しい…。何か企んでいるな…。黒猫も怪訝そうな顔をしている。 あやせが封筒を開けると、数十枚の写真が出てきた。俺は黒猫の方を見やり、 「俺達も見ていいか?」と沙織に聞いた。 「もちろんでござる!」 さっきよりも口元がはっきりとω←こんなふうになっている。…やっぱり何か企んでいるようだ。 あやせが見ている写真を俺と黒猫が覗き込んだ。写っていたのは俺達の見覚えのあるものだった。 “ギャーギャー騒ぎながらPSPをしている桐乃と黒猫” “黒猫の手を引っ張りながら大はしゃぎしている桐乃” “黒猫の服装を手際よく整えている桐乃” “シスカリの限定ディスクを黒猫から受け取っている桐乃” “コスプレイヤー達を眺めながら歓喜している桐乃”等――。 いつもはあやせに見せないであろう顔をしている桐乃の写真だった。…いや、あやせはこの顔を知っている。 この夏コミの件で怒ったあやせに、自分の趣味について熱く語ったあの時の桐乃の顔がそれに近いかもしれない。 ……ところで沙織のやつ、カメラなんて持って来てたっけ?黒猫も同じ事を思った様で、 「隠し撮りなんて、あなたも趣味が悪いわね……。」 なんて事を言いながらも、桐乃と“楽しそう”にしている写真にまんざらでもない様子だった。 一方のあやせは、また少し表情を曇らせながら、 「…桐乃…とても楽しそうですね……。それなのに……あんな酷い事を言って……。 私、桐乃のことを全部知ってるつもりでいたのに、本当の桐乃のことは何も知らなかったんですね……。 何だか…桐乃が遠くへ行ってしまったみたいです……。」 「いや、あやせ。それは違うな。あいつは、おまえのこともオタク趣味もどっちも凄く大事で大切で必要なものだって 言っていたじゃないか。おまえも聞いただろ?『どっちが欠けても、あたしがあたしでなくなる。』って。 逆に言えば、どっちも本当の桐乃って意味じゃないか。」 「……そう…ですよね。私もっと桐乃のこと知りたくなりました。私の知ってる桐乃は、まだ半分だから……。」 「そこであやせ氏にお願いがござる。」 沙織が唐突に言った。 「夏コミのようなイベントは、いきなりでは少々ハードルが高いと思いますゆえ、 拙者もう少しソフトなイベントを画策中でござる。もっともまだ何をするかも決まっていないのですが、 もし開催することになりましたら、あやせ氏にもご参加して頂きたいと思っておりますが…いかがですかな?」 「はい!是非。よろしくお願いします。」 「では連絡先を教えて頂きたいのでござるが…折角なので、皆でアドレス交換いたしましょうぞ。 ほら、黒猫氏も携帯出してくだされ。」 「べ…別に……。私はいいわよ……。」 すると、あやせが、 「お願いします。私の知らない桐乃のこと、もっと教えて欲しいですから……。 それに、黒猫さんともお友達になりたいですし…。」 黒猫は“友達”という言葉に反応したのか、 「…そこまで…言うのなら…。し、仕方ないわね……。」 本当、素直じゃねーよな。 そして皆が携帯を出し、重ね合わせて赤外線通信を始めた。 赤外線通信って何かほのぼのするよな。これから友達スタートですって感じで。 それぞれの受信が終わると、 「有り難うでござる。」 「ありがとうございます。」 「…………。」 …黒猫もお礼くらい言っとけっつーの。本当は嬉しいくせに。 皆が携帯をしまうと、あやせが俺に、 「…じ、実は、今日…、お兄さんにもお、お話があるんです……。」と、 何だか照れ臭そうにモジモジしながら言った。やっぱりあやせは男心をくすぐる何かを持っている。 「この間はありがとうございました。桐乃と仲直りできたあの日のお兄さんの話、 全部ウソだって桐乃から聞きました。私も引っ込みがつかなくて……。 きっかけを作ってくれたお兄さんには感謝しています。」 「そっか……。まぁ、とにかく仲直りできて良かったな。これからも桐乃のことよろしくな。」 「はい!」 あやせは満面の笑顔で答えた。 「何故鼻の下を伸ばしてデレデレしているのかしら?」 「な、な、何を言うんだ!?そんな訳ないだろ!」 「あなた今、この男のことを『お兄さん』と呼んでいた様だけれど、気を付けなさい。 この男、重度のシスコンだから、『お兄さん』なんて呼ばれたら興奮してしまうわよ。」 「だから!違うと言ってるだろうが!!」 「ほほう。然様でござるか京介氏。では拙者も呼び方を変えた方がよろしい様ですな?」 うっ…何か寒気が……。 「兄上!!」 「やめろ!!」 「むぅ……。おかしいですなぁ……。兄者の方がよろしかったですかな?」 「そういう意味じゃねぇ!!」 「ほらね。」 「…はい…。凄く…嬉しそうです……。」 ……もうどうでもいいや……。勝手に言ってろ。 俺がため息を付いていると、黒猫が思い出した様に、 「ところで沙織、さっきの写真のデータが入ったメモリーカードを寄こしなさい。 人間界での私の行動が、世間に公表されたら困るのよ。」 「おっと、失礼致したでござる。黒猫氏もあの写真が欲しいのでござるな?」 「な、何を訳のわからない事を言っているのかしら?は、早くメモリーカードを寄こしなさいと言っているでしょう?」 「もちろん黒猫氏の分も用意してあるでござる。」 全然人の話を聞いていないな沙織。まぁ確かに黒猫も写真が欲しいと言っている様なものだが。 沙織はカバンの中から封筒を出し、黒猫に手渡した。 「…人の話を全く聞いていないようね。…まぁいいわ……。」 むすっとしている様だが、どうやらご期待に添えたらしい。 「あら?さっきの封筒よりも、厚みがある様だけれど……。」 「黒猫氏の分は、先程の写真に加えて特別に少し枚数が多く入っているのでござる。」 「あら…そう……。」 “特別”という言葉に少し顔が緩んだ気がした。 「開けるわよ。」 ガサゴソと中身を取り出すと、みるみるうちに黒猫の顔が赤く染まっていく。 そのまま硬直しバラバラと写真をテーブルの上へ落とした。 「!!!!やべぇ!!すげぇ!!ありえねぇ!!」 写っていたのは―――。 “前を歩く桐乃と沙織を、後ろから見ながら微笑んでいる黒猫” “これ以上無いといった超嬉しそうな笑顔で、大量のマスケラ同人誌を抱えている黒猫”等――。 と・に・か・く、黒猫の笑っている写真ばかりが集められたものだった。同人誌を抱えている黒猫は、マジでヤバい。 プロのモデルである桐乃やあやせの笑顔に匹敵するくらいに、めちゃくちゃ可愛い。 …黒猫…。あの時、皆と別行動だったから油断してたな。 「ハッ!!」 我に返った黒猫は、テーブルの上に覆い被さる様に写真達を隠そうとした。 「……や…やめて……。見…ない…で……。」 羞恥に震える黒猫――。顔を紅潮させ、赤色の瞳が潤んでいる。 うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!なんて顔しやがる!!抱きしめて頭をよしよしとかしてぇ!! これが“ギャップ萌え”ってやつか!!そうなのか!? 俺はギャップをこよなく愛する男だったのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!! ハァハァハァハァ…………。 「……お兄さん…。喜びすぎじゃないですか?」 「べ、別に喜んでねぇよ。す、少しびっくりしただけだ。」 するとテーブルの上に突っ伏していた黒猫は、バラ撒かれた写真を集めてこう言った。 「速やかにカードを渡しなさい。あんな忌まわしいものは、私の手で闇に葬ってあげるわ……。」 と、その時俺はさっきの写真に違和感を覚えた。 そういえば沙織が写っていたような……。 黒猫の要求に対して、沙織は残念そうに、 「申し訳ない黒猫氏。実はあの写真は皆、拙者が撮影したものではないのです。 あの日、拙者の知り合いが大勢参加していると申したでござろう? その方達に我々を見かけたら撮影しておいてくだされとお願いしていた次第でござる。 夏の想い出に……と。」 黒猫は一転、青ざめた表情で、 「…あなた、ファンネルは飛ばしていないと言っていたくせに、仲間をあちこちに散りばめて、 私達を狙っていたのね……。な、なんて……恐ろしい……。」 …マジで恐ろしいやつだ……。が、しかし、“夏の想い出”に……か。沙織らしいじゃねーか。 桐乃も黒猫も沙織も、スゲェ輝いてるよ。大好きな事を、大好きな仲間とできるなんて最高じゃん。 羨まし過ぎるぜ、おまえら。 と、少し和んだのも束の間、沙織は更なる爆弾を投下してきた。 「こちらが京介氏の分でござる。」 俺にくれたのは、やはり封筒だった……。 うっ……。み、見たくねぇ……。こんなにも禍々しく見える封筒は初めてだ……。 が……。しかたねぇ。黒猫だけって訳にもいかんだろう。……よし。さぁ!いくぞ!! 俺は覚悟を決めて写真を取り出した。うっ……お……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ…………。 写っていたのは―――。 “オタク達に交ざって狂喜しながら写真を撮りまくる俺。(正面から撮られているので被写体は見えない)” “メイドさんの格好をした可愛い女性に見つめられて、顔を真っ赤にしている俺” “そのメイドさんにそっくりな女の子が、エッチな事をされている同人誌を買っている俺” “そしたら妹から飛び蹴りを喰らい地べたに転がり、その勢いで降ってきたエロ同人誌まみれになっている俺” “なのに妹達の大量な荷物をを持たされて汗だくになっているのに、妹に怒鳴られてもヘラヘラ笑っている俺” …………写真っていうものは、ちゃんと時系列順に並べないと、もの凄い捏造ストーリーが生まれるんだな……。 俺は頭がおかしくなったのか、ツッコミ所がズレてきている。 そんなグロッキーな俺を畳み掛ける様に、あやせが冷たい瞳で、 「……やっぱり、お兄さんは変態だったんですね……。見直したつもりでしたが、考え方をもう一度改めさせて頂きます。」 ……くそっ……沙織め……。折角あやせの評価が上がったと思ったのに……。 「さっきも言ったでしょう?この男は重度のシスコン変態鬼畜マゾ兄貴だって。」 ついさっきまで涙目だった黒猫が、俺の雲行きが怪しくなってきたとみて復活してきた。 どんだけ意地悪なんだよ……。てか単語増えてるし……。 「だから妹の頼み事なら何でもしてくれるそうよ。」 黒猫はあやせと沙織に目配せをしてテーブルの中央へと集めた。 「ほうほう。ナイスアイディアですなぁ。黒猫氏。」 「面白そうですね。不本意ですけど。」 何を企んでいるんだ?てか…俺は仲間外れかよ……。すると三人は俺の方を向き、甘ったるい声で囁いた。 「……兄さん……。」 「……お兄さん……。」 「……兄上……。」 俺は胸の鼓動が早くなるのを感じた。が…掻き消す様に言った。 「な、なんだよ!おまえら!いきなり変な声出しやがって……。」 艶かしい顔で俺を見つめる三人……。 「……わ、わーったよ!何でも好きな物、注文しやがれ!!」 「あら兄さん。珍しく察しがいいわね。それじゃあ…モンブランとレモンティーをよろしく。」 「ありがとうございます。お兄さん。私は苺のショートケーキとミルクティーを。」 「兄上、かたじけないでござる。拙者、チーズケーキとカプチーノをお願い致しまする。」 ―――――――――――――――――――― やれやれ……。年下の女の子達にからかわれて…奢らされて……。あの時感じた嫌な予感はこの事だったのか――? いや…そうじゃないだろ。あやせの過去や、黒猫の意外な一面を見たり……。俺にとっては貴重な一日になった。 そして何よりも、桐乃がどれだけ友達に想われているかも知った。俺の予感もあてにならないな……。 今、目の前で“俺の妹達”が楽しそうにお喋りしながらケーキを食べているのを見ていたら、 桐乃だったら何を注文するだろう?……と、ふと思った。別に…桐乃に会いたくなったとか、そんなんじゃねーからな。 〜終〜 -------------